株式会社マーケティングジャーナル

FRONT VIEW 最前線の挑戦

サタケ SAXES Knight 3.5「ものづくりを進化させる」

 2020年3月に発売開始となったのが光選別機SAXES Knight 2.3。

超高速応答のピエゾバルブを搭載し、選別精度・処理能力が向上、消耗部品にハイグレード品を使い、高いデザイン性が目を引いた。コロナ禍真っただ中の発売で、営業活動の自粛や展示会の中止などがあり、従来のプロモーション活動が充分に行えなかったが、生産者に提案した新たな価値が受け入れられ、年間販売台数は従来機のピカ選を大幅に超えた。それに引き続いて2021年3月に発売されたのがSAXES Knight3.5だ。業界最大の3.5t/hの処理能力を持つ8インチ籾摺機対応型で、こちらも発売初年度から年間生産計画を上回る受注実績となっている。同機の製造現場を訪ね、これからのものづくりを探った。そこには様々な面で高度化・複雑化する社会にあって、その状況に果敢に向かいあう姿があった。


  
 ▲製造部製造課 藤野課長 ▲SAXES Knight 3.5 ▲ 稲次取締役副社長

 

 SAXES Knight 3.5を製造しているのは岩手県北上市のサタケ東北。光選別機の他にも乾燥機、籾摺機、それに加えて精米機などを含むその他の機種を特機類として生産している。そこでものづくりに取り組んでいる同社副社長の稲次宏之取締役(54歳)と製造全体の管理に携わっている製造部製造課の藤野拓哉課長(39歳)に話を聞いた。「ここ数年、お客様のニーズの変化を実感として感じています。明らかに声が変わってきました。必要とされる機能は高度化し、より洗練された外観が求められています」と稲次氏。作業速度・精度、耐久性、省エネ性能、そしてデザイン性、ユーザーが製品に求めるニーズはあらゆる面で高度化している。そのユーザーの“より優れたもの”を求める声に応えて誕生した光選別機がSAXES Knightで、同機3.5は同シリーズの上位機種。その製造現場にはひとつ上の品質に挑む取り組みがある。

 機能を向上させるに連れて、ものづくりは精緻になる。従来機に比べて約1.7倍のバルブ開閉速度を持つピエゾバルブを採用し、4色LED、フルカラーカメラ搭載で、独自の画像処理技術により選別能力を向上させているが、そのためより性能の高い精密機器が多用され、製造では細心の注意が必要となる。それに応じて組み立てスペースは埃などがたたないように土足厳禁とし、電子回路の基板のために静電気対策も施されている。また業界最大となる毎時最大処理能力3.5tの処理能力を実現する機体はSAXES Knight 2.3に比べ大型となり、現場ではホイストを新設して部材を運ぶ。部品点数も1.3倍ほどになり工数も増える。そこでAGV(無人搬送車)などを使って運搬の自動化を進めている。さらに検査項目も増え、組み込まれたソフトウェアについても検査プログラミングを立ち上げ確認作業を実施する。ものづくりの現場が製品に合わせて進化している。

 大きな特徴となっているのがその高いデザイン性だが、中でも存在感を放っているのが光沢のある深い黒が印象的なピアノブラックの樹脂パネル。「そこに少しの傷もつけるわけにはいきません」。手間を惜しまず細心の注意を払い、保護シートをかけ、慎重な取り扱いが行われている。機体ヘッド部の両側には離れた場所からでも運転状況が一目で認識できるようにカラーLEDがライン状に埋め込まれているが「LEDの取り付けは非常に細かな作業で、樹脂を傷つけないようにしながら丁寧に行わなければなりません」。非常に高い技術で樹脂との一体感があり、美しい仕上がりとなっている。従来のものづくりからすれば“そこまで必要なのか”ということにもなるが、「機能だけで無く外観においてもお客様の高いニーズがあるわけで、その想いに応えて形にしていきたいと思っています」。

 同工場は『見て、納得してもらって、買ってもらえる工場』の取り組みを実践し、「今はコロナ禍で思うようにいきませんが、いつでも工場を見学していただきたいと思っています。どのように製品がつくられているのか実際に確認することができます」。つくる者と使う者の距離を短くしようとする意識があり、“お客様の想いを形にする”ものづくりに繋がっている。

 今課題となっているのは原材料・部品の調達。製造に必要なものが品薄となり、値段も高騰し、安定生産に不安が出ている。「電装品などの基盤を始め、様々なもので入手が滞り、臨機応変な対応をしていかなければなりません。また燃料費も値上がりしています」。そのコストを吸収するため、材料の取り方を工夫し、スクラップとなる部分を極力減らすなど、様々な取り組みが行われ、“ムダ、ムリ、ムラ”を省くためのQCサークル活動も盛んで、39のグループで課題を解決するための改善活動が継続的に行われている。今メーカーにとって厳しい製造環境にあるが、効率化の追求がものづくりを継続していく力になる。

 もう一つ課題となっているのはものづくりに携わる働き手を如何に確保するかだ。「全体的にものづくりの現場は人手不足になっています」。同社の工場付近には他業種の工場もあり、地域の限られた働き手を分け合う形となっており、よりよい条件のところに働き手は流れる。その中で働き手から選ばれる製造現場にしていくことが何よりも求められる。一方で人手を補うための作業の自動化も探られている。「手作業の部分はまだ多く逃げることのできない課題です」。時代の流れに対応したものづくりが求められている。

 そんな状況の中でワンランク上の機能を持つSAXES Knightを製造するということは、「新しい意欲的な製品への挑戦であり、製造に携わる者の技量を伸ばすことに繋がっています」と藤野氏。新しい価値を創造することは簡単なことではない。考えを巡らし試行錯誤を重ね高いハードルを越えるたびにその知見・経験が新しい能力となって積み重なっていく。「SAXES Knight 3.5は、当初、通常勤務時間内の1日当たりの生産台数が6台でしたが、今は8台まで向上しています」。またその挑戦で得たものは、他の製品づくりにも活かされ、「品質の底上げに繋がっています」。品質に対する高い意識が製造現場全体に広がっている。受注状況からしてその評判の高さは窺われ、「現場では実力の向上と共に、自信と達成感を得ることができました」。新しいことは困難も多いが、その挑戦から得ることも多く社員のモチベーション向上に繋がっている。今、組織の見直しが行われ、ワンランク上のSAXESシリーズの製造などによって得たノウハウや情報が現場で共有できるような体制になり、全体のレベル向上が図られている。

 「様々な課題を克服しながら利益を追求していくのが私たちの仕事ですが、要は人です。そこに時間とコストをかけていきます」と稲次氏。高度化するニーズに応えるため、様々な取り組みが行われているが、その中で働き手の能力向上は大きな要素だ。そこがなければものづくりは進化しない。SAXES Knightが人を育てる刺激になり、挑戦が人を成長させていた。

  

 


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