株式会社マーケティングジャーナル

現場通信アーカイブ

サタケ:「美味しいお米をつくるため乾燥にもこだわる」

 

 


▲片山さん▲魚沼産コシヒカリの産地

 

 今やブランド米は群雄割拠の様相だ。各地の米所でつくられるコシヒカリを始め、北海道の「ゆめぴりか」、青森県の「青天の霹靂」、秋田県の「あきたこまち」、山形県の「つや姫」、福井県の「はなえちぜん」、佐賀県の「さがびより」、熊本県の「森のくまさん」などなど、まだまだほんの一部で、量販店の店頭では競い合うように商品が並べられている。農業が大きく変化する中、高い付加価値で収益性の向上を狙い、地域農業の持続を図る有効な手段の一つとなっている。中山間地の農業が生き残る方策でもある。新しい品種でブランド化を図るものや、従来品種を恵まれた自然環境や栽培を工夫することで良食味米に仕上げていく方法など様々な取り組みが行われ、農家の挑戦の舞台ともなって、大きなやりがいに繋がっている。

 その中、挑戦を受ける立場とも言えるのが、飛びぬけたトップブランドである“魚沼産コシヒカリ”だ。長年トップの座にあり続け、誰もがその名を知り、多くの農家がそのブランドの在り方に憧れを抱いている。

 その魚沼産コシヒカリの産地の中でも、高い評価を受けているのが南魚沼市の旧塩沢町西山地区。そこで丹精込めたお米づくりを行っているのが片山秀斗さん(44歳)だ。美しい自然に恵まれた先祖伝来の土地を大切にしながら、作業受託も含めた18haの規模で丁寧な農業を営んでいる。「労働力は両親と私たち夫婦の家族が中心です。規模を増やして雑になるのが嫌で、手の届く範囲でやりたいと思っています」。また学生時代から本格的なスキーに取り組み、プロスキーヤーとしても活動している。5年前までは大会に出ていたが、その後選手を引退し、4年前に家業の農業をお父様から引き継ぎ、昨年は法人経営として㈱でんべえを立ち上げた。生産するのは自慢のコシヒカリ。冬場は3mほどの積雪がある地域で、農作業はできないが、スキー学校を冬の事業として行っている。

 「この地域は、水、土、日当たりなどの関係で美味しいお米がとれます」。雪解け水が染みこんだ豊富な山からの水、保肥力に優れた粘土質の土など、恵まれた自然環境にあり、「山からの水は冷たく、田んぼの土を冷やし、登熟期間を長くすることができます」。お米が美味しくなる条件があり、コシヒカリがブランド米へと育っていく。

 その中で特に片山さんが力を入れているのが特栽米の栽培だ。慣行栽培に比べて農薬や化学肥料を5割以上減らしたもので、「有機質肥料を多く投入し土づくりにこだわっています。しっかりとした土をつくり、その地力を使って美味しいお米を育てます」。また水の管理にも細心の注意を払い、常に適量の水となるように、朝晩の見回りを欠かさない。この辺りの田んぼは1枚1反ほどが基本の大きさで、片山さんはそれが80枚ほどあり、一通り回るのに1時間半から2時間かかる。それが1日2回。その手間が味に反映されていく。

 特栽米は“でんべえ米”としてインターネットや飲食店との直接取引で販売され、贈答用に購入する人もいる。その味にひかれた根強いファンがいて、その品質に対する評価は高い。「美味しいお米をつくって、それを食べてもらえる人を増やす」。片山さんの真直ぐな夢だ。

 それを叶えていくためには、需要者の期待に応え続けていくことが必要になる。それによって本当のブランド力が高まっていく。そのための丁寧な米づくりであり、収穫後の作業にも余念はない。「美味しいお米のためには乾燥、籾摺、精米、そして渡すところまで、こだわりが必要だと思っています。特にお米の乾燥は非常に大事です」。その中で、今回新しい乾燥機を導入。それまでもサタケの乾燥機を使っていたが、「もう17、18年使ってきて、基盤が壊れてしまうと交換の部品も無く、秋の忙しい時期に故障すると困るので、買い換えることにしました」。選択したのはサタケの新型遠赤外線乾燥機サクセス。50石のSDR5000Xを3台、7月に導入する。機種決定の決め手となったのは「時間をかけて丁寧に乾燥させたいので、そういうモードがあったことです」。これが一番のポイントになった。「いくら良い田んぼで、良いお米をつくったとしても乾燥でダメにする場合があります。急いで乾燥すると脂肪酸度がグッと上がり、お米の劣化が速くなります」。片山さんの農業において何よりもまず大切なのは、美味しいお米をつくるということ。こだわりのお米を最後まで追求する“プロの選択”ということのようだ。この他にも、これまで使ってきた機械に比べ、遠赤外線機能や省エネ機構が向上しており、期待も高い。さらにサクセスの魅力である高耐久性については「農業機械は安いものではありません。なるべく長い年数使える事は大変嬉しい」。それが収益性を向上させることにもなる。また、農機を販売する側にとっても、故障が少ないことは、後々の手間を少なくすることになり、魅力は大きい。

 魚沼産コシヒカリとして充分なブランド力を持っているが、片山さんはお米の食味を競う全国コンテストにも出品している。「産地としてだけではなく、個人としての評価を目に見えるものにすることで選択の目安にして欲しい」。品質を極めていく上でも新型乾燥機が大きな力になりそうだ。「スキーでも努力しなければうまくなりません。お米づくりも同じで、努力しないと良いお米はつくれません。勉強しながら一つ一つ高めていければと思っています」。その先には地域を越えたブランドの確立があり、しっかりとした利益にも繋がっていく。片山さんには「冬場はスキー、夏場はお米づくりを行う当社で若い人を雇用し、選手としてスキーを続けられる環境を提供したい」という夢もある。美味しいお米づくりがその夢の実現に向け、大きな力となっていくに違いない。


松山:車速連動で肥料のコスト削減「無駄のない農業を応援する」

 

 農業を成長産業にするとして各地様々な取り組みが行われている。規模拡大から始まって、水田での野菜作導入、農産物に付加価値を付けたブランド化、加工、販売までも行う6次産業、輸出の促進など。如何に農業を儲かるものにして利益を上げていける産業にするのか、その道が探られている。そのためには、農業を経営としてしっかり捉える必要があり、ものを売る“攻め”だけでなく、如何に作るかという“守り”も必要だ。しっかりと生産コストを管理し利益を追求していかなければならない。それが経営体の体力を強化し、農業持続の道を開く。その中で肥料の無駄を省くブロードキャスターが活躍している。


▲車速連動で無駄なく散布▲均一散布を実現するスパウト

 

 今回お訪ねしたのは千葉県香取郡神崎町の農事組合法人神崎東部。「従業員に普通のサラリーマン並の給料を払っていけるようになりたい」と、語るのが、同法人の代表理事を務める大原弘宣さん(64歳)。豊かな水源に恵まれた利根川の流域にあって、早場米の産地でもあり、ここを舞台に4つの地区にまたがる82haの水田で、22haの麦大豆を含む土地利用型農業を大規模に展開している。育てているお米は、ふさおとめをメインにコシヒカリなど。飼料用の米や鉄コーティング直播も取り入れ、大規模ならではの多様な取り組みを行っている。設立は12年ほど前。「元々は一つの地区から始まったのですが、農業をやる人が少なくなり、高齢化が進展し、段々規模が拡大していきました」。現在労働力は常勤5名、非常勤5名。「20代の若手から中堅、そして我々の60代と、世代はうまく繋がっています」。時代の趨勢に対応しながら営農を推進し、持続性を持った事業展開が行われている。

 その中で大きな力になっているのが充実した機械力。「これまでの農業は大ざっぱな所があって、そこが農家のいけないところです」との思いがあり、農業を“見える化”するICTを利用したシステムの導入にも熱心だ。クボタのKSASを導入して、食味・収量コンバインで収穫時期にとれたお米のタンパク質などを圃場毎に分析し、施肥設計に活かしている。「必要な所に必要な量の肥料を施肥し、必要の無いところにはふらない。これが大事なところです」。それまでは「肥料をふりすぎて、稲がねてしまいました」との反省もあり、均一に散布することへの思いは強い。そこで導入されたのがニプロの車速連動ブロードキャスターMP510EXA。

 昨年の10月に導入し、麦の施肥に使い、今回、春作業に臨んだ。新しくブロードキャスターを導入した理由は「無駄のない農業を実施するため」。それ以前のものは、必要量を過不足無く散布することを心がけてはいても、経験と勘による作業のため、適切な量を撒くことができないでいた。「面積から必要量を割り出して散布していましたが、どうしても肥料が足らなくなってしまい、昨年は100袋ほど買い足しました」。結局、肥料過多になっている場所ができているということで、収穫時期に倒伏の原因ともなっていた。それに何よりも生産コストを押し上げる要因となる。それらを解消するものとして肥料の均一散布を実現する車速連動のニプロブロードキャスターに対する期待は大きい。

 麦の播種前に行った施肥では、無駄もなく、「以前の麦の生育は、肥料の散布ムラにあわせて虎の縞模様のようになっていましたが、今回はそれが無い。今のところ一番の生育具合」と収穫への期待は高まる。米作りでは、約60haの肥料散布があり、順調な生育と生産コスト削減に対する効果はさらに大きなものとなる。

 実際の作業では、「散布幅、散布量を入力するだけで、後は走るスピードに合わせてシャッターの開度が自動で調整され、均一な肥料散布ができます。大変使いやすいと思います」と、散布作業を担当する青野雄太さん(28歳)。作業時間は1ha、30分かからないとのことで、「いちいち開度の調整をしなくても良いので手間がかからず、速く走れば、それに合わせて開度を調整してくれます」。以前に比べ、作業時間が大幅に短くなった。天候が安定している内に一気に作業することができ、近年天候不順が目立つ中で、作業のスピードアップは生産者の大きな力になる。

 「作業していて肉体的に楽なのはもちろんですが、散布量に気を遣わなくて良いので気分的にとても楽です。それに専属のオペレータでなくても、誰でもこの作業ができるようになる」。ストレスを減らし、あるいは交代での作業を可能にし、オペレータの負担を軽減することに繋がる。

 もちろん肥料を過不足無く適切に撒くことで、生産コストの削減を実現し、肥料の撒きすぎによる倒伏の予防にも貢献する。

 現在、車速連動ができる肥料散布機は幾つかあるが、その中からニプロの機械を選んだのは、「均一に散布できるから」。ただ車速連動をするだけでは、予定量を過不足なく撒くということだけで、圃場内にムラが生じる場合もある。ニプロブロードキャスターは独自のオーバーラップ散布方法を採用し、均一散布を実現することで、肥料の偏りを解消していく。中央部から周辺部へと徐々に肥料の濃度が薄くなり、散布量を図形にすると、散布幅を底辺にした綺麗な二等辺三角形を描くことができる。そのため散布幅の半分の長さを目処にして重ね合わせていくことで、均一な肥料散布を実現する。「重なってちょうど良くなる。この散布方法が一番良いと思った」。この他、「スパウトも簡単に取れて洗いやすい」とメンテナンス性も高いようで、プロの選択となった。

 「収量を上げていくということを念頭に、今、収益の分岐点を探っている所です」。地域では高齢化も進み、農地の受け手として規模は拡大する方向にあるが、経費が増大し利益が出なくなればたち行かなくなる。「無駄のない農業をしていきたい」と強い意志が窺えた。そこに農機が果たす大きな役割がある。


▪ニプロブロードキャスターMPシリーズMP-EXA/MP-EXK/MP-EX/MPシリーズ

 AG-PORT付トラクタに対応するMP-EXAシリーズ、独自車速信号取出し付のトラクタに対応するMP-EXKシリーズ、オプションで車速連動仕様となる電動シャッター仕様のMP-EXシリーズ、経済的な手動シャッター開閉仕様のMPシリーズと、ユーザーのニーズに合わせて充実のラインナップ。

 《主な特長》▷独自スパウトとナイロンストリップの作用で肥料は左右均一に繰り出され、中央部が厚く周辺部が薄くなり、散布量は綺麗な二等辺三角形となる。そのため、オーバーラップ散布することで走行位置が多少ずれても均一な施肥を実現する。▷EXA/EXK:調量値の測定が簡単に行える調量モード、残った肥料をシャッター全開で排出できる排出モード、あぜ際散布用の外周モード、旋回時に設定した車速以下でシャッターが自動に閉じる旋回モードを搭載。



諸岡:女性が活躍し目標に向かって共に進む「能力重視の人材活用で改革推進」

 

 少子高齢化が進み、将来的に労働人口の減少が日本経済に大きな影響を与えると予想され、如何に働き手を確保していくかは大きな課題となっている。その状況を先取りしているような状況が農業の生産現場ともいえ、新規就農者対策と共にこれまで補助的作業を担うことが多かった女性農業者を主役として働いてもらえるような環境作りが、農業女子プロジェクトを始めとして各地で行われている。ものづくりの製造現場でも同じ事で、優秀な人材を確保するため、能力を重視した男女問わない登用を行い、女性の活躍を応援する職場作りも進められている。その中、諸岡では管理職にも女性を積極的に起用し、職場の活力が生み出されている。社内で係長以上の管理的役職に就いている女性に集まって頂き、比較的男性の職場とされる製造業で働くことの苦労やこれからの目標を伺った。


▲諸岡社長と女性社員▲インターネット回線の参加者

 

 参加者は管理本部から総務課の伴課長、経理課の守安係長、営業本部から海外営業課の岡野係長、部品・サービス部の保田担当部長、サービス課の渡辺係長、部品課の大窪係長、生産・技術本部から生産管理部の伊藤次長、各地の営業所からはインターネット回線を通じて北海道営業所の唐沢係長、中国営業所の三木係長、九州営業所の上米良係長の10名。また諸岡社長、諸岡専務、今井執行役員の幹部も参加した。従業員約170名中、女性の係長以上の役職者は12名、女性従業員はパートを含め36名となっている。

 冒頭、諸岡社長が「国を挙げて働き方改革が進められているが、我が社でも生産性の効率をあげ、定時で帰るにはどうしたら良いのかなど、テーマを持って社員の方々に考えてもらっている。また有給休暇の取得についてもその意義や取得について改めて取り上げるなど、諸岡でも働き方改革を進めている。その中で当社は、女性の役職者が他社に比べて比較的多いのではないかと言われている。以前から男女の別なく能力のある方にはそれなりの仕事をしてもらうという方針で進めてきた。今はその女性社員が非常に大きな戦力となり、仕事がスムーズに流れることに貢献して頂いている」と、社内で女性が大きな役割を果たしているとし、その後、各参加者がそれぞれの思いを披露した。

 女性参加者の中で最も上席にある、部品・サービス部の保田担当部長は「今年38年目。部長職を拝命したとき当初は荷が重いとお断りしましたが、社長の期待を受け、皆様のご協力もあり何とか仕事をこなしています。私の仕事は皆さんが仕事をしやすくすることだと思っています。長年働いていますと両親が年老い世話などで休まなければならないとかがありますが、休みにくいという事はありません。周りの方たちが助けてくれます。間違っても良いからと自由に伸び伸びさせて頂いてます。男性の部下との関係ですが、はっきりとものを言うことで、ついてきてもらっています」。

 生産管理部の伊藤次長は「1年ほど前に営業本部から生産本部に異動となりました。現在、社が生産体制の基盤整備を目標としており、大役を任され奮闘しています。私自身子どもが3人おり、一番下を出産する時はこちらの会社に所属し育児休暇を取得しました。上の2人は他の会社で育児休暇を取得したのですが、復帰のハードルが高く、働きづらい思いをしました。それに比べ、こちらは皆さんに気を使って頂き、社長からも声をかけられ、非常にフレンドリーな会社だと思います。男性の多い生産・技術の部署に来た当初は、凄い所に来たなと思いました。メーカーの根幹であり、その中でクッション材の役割を意識しています。経験のある男性の上長となり、分らないことははっきり申しあげ、生産の体制は改善したい、という思いを伝え、動いて頂いています。急激に改革を進めるようなやり方ではなく、皆さんがやっていることをいったん全て受け止めて、それから改善に向かって進めています。一人一人の努力が繋がる気持ちの良い生産の場を目指したい」。

 経理課の守安係長は「今年4年目で、今業務の改善を進めています」、部品課の大窪係長は「部品の発注や注文を受けたり、請求書関係をやっています。個々ではできないので協力しながら仕事を進めたい」、サービス課の渡辺係長は「今年で6年目。売り上げ目標に向け部品とサービス協力して、売上を達成していきたいと思ます」、総務課の伴課長は「働き方改革ということで、有休取得に向け、計画的にとって頂けるように働きかけるなど、基盤整備を進めています。部内のコミュニケーションを充実させたい」と、取り組んでいる業務、抱負について語った。

 海外営業課の岡野係長は「私は元々飲食業で働いていましたが、茨城の地方の会社で世界に機械を輸出しているのは凄いことじゃないのか、こんなグローバル企業が地元にあったのかと思い、入社しました。今年5年目。海外向けの出荷業務の書類作成などを行っています。売上が上がってく中で頑張っています。同じ建設系の会社さんでは、女性を意識的に窓口担当にされていて、意見を求められたこともあります。クレーム処理が男性よりもスムーズにいくことを期待されています。女性だから柔らかく、丸く収めることは多くあると思います。しかし、どんなことでも女性を前にして丸く収めようとするのは少し違うと思います」と、女性に対する期待とそれに対する思いを述べた。

 北海道営業所の唐沢係長は、「パートから正社員になり19年目です。諸岡が大好きです。本社・各営業所の女性を繋げる“エムコレクト”の活動にも力を入れています。元々は社内の女子会でした。自分の仕事だけを考えるのではなく、時期によって仕事の多い人や一人で負担が大きくなっている人を全員で分担して助け合えればと思っています。横の繋がりの組織です。営業所が営業所だけの仕事をするのではなく、本社の仕事も分担してやっています。今後はスキルアップを図り、営業所全体へと視野を広げていきたい」、九州営業所の上米良係長は「今9年目。諸先輩がいる中で大役を任され緊張した日々を過ごしています。お客様と最初に接することも多いので自社製品の知識をもっと深めたい」、中国営業所の三木係長は「今8年目。皆さんに助けられながら日々頑張っています。コミュニケーションを円滑に図っていけるようになりたい」と、営業最前線から働く女性の思いを伝えた。

 能力重視の男女を問わない登用が、共に会社のことを考える貴重な戦力を育み、目標に向かって進む力となっていた。女性の大きな可能性を感じた。


北海道で活躍するダンロップ  「安定性があり、乗り心地が良い」

 

 例えば走るなら、どんな靴でも良いというわけではない。話題になったドラマをなぞるようだが、現実にその差は歴然とある。トップを目指すのならなおのこと。それを機械化農業の分野に当てはめてみると、トラクタのタイヤにも相当する。プロ農家として、より高い水準を目指すのなら、その違いは決して小さなものではない。目指すゴールに向かって確実に歩みを進めるための大きな力となる。今回、住友ゴム工業が展開するダンロップタイヤのユーザーに話を聞いた。


▲三上さん(左)と吉田さん▲好評価のダンロップタイヤ

 

 取材でお訪ねしたのは北海道石狩郡新篠津村。札幌の北に位置し、石狩振興局唯一の村。隣の江別市との合併話もあったが農業政策の違いなどから独自路線を選択。地域住民それぞれが当事者として、地域の維持・発展に関わっている。その中で積極的に農業に取り組んでいるのが今回お話を聞いた、若手農家の三上雄平さん(29歳)。10haの水稲と、6haのタマネギをメインに営農を展開。農業の明日に向かって逞しく進んでいく姿が印象的だ。

 就農したのは6年前。大学では商学部に学び、農業における経営の重要性を認識し、収益の上がる農業を模索している。現在、水稲では北海道のブランド米として人気の高い“ゆめぴりか”の栽培に取り組み、それに加えて野菜作を導入しタマネギを栽培している。「お米の値段は少し良い時もありますが、全体的には低く、タマネギなどの野菜を取り入れています」。複合経営を進めることで収益性を上げ、経営の安定化を図っている。また栽培においても、「水稲にタマネギを取り入れることで互いのメリットを引き出すことができます。タマネギの土壌細菌は水田で流すことができ、タマネギ後の水稲では肥料がほとんど要りません」と、利点は多い。

 経営の形は家族経営だが、「地域の7人の農家さんと㈱上篠津アグリプロダクションという会社を作っています。今は共同での雇用や業務委託を行っていますが、ゆくゆくは野菜の販売などをしたいと思っています」。意欲的な農業を展開している。

 そんな農業の中で効率的に作業を進めるため、機械力を駆使。トラクタは4台を所有し、GPS搭載機も揃える。「まだ無人操舵などはしていませんが、ゆくゆくは使えるようにしていきたい」。効率化、省力化が農業を持続していくための力となる。地域では高齢化も進み、後継者が少なく、「これから先、耕作者のいない農地が一気に出てきます。この少人数でそれらを維持していけるのかどうか少し不安です」。それらの課題にも機械の活用は欠かせない。そんな営農の中でトラクタの交換用タイヤとしてダンロップが採用された。

 「その時使っていたタイヤがちょうど交換時期になり、そのタイミングでJA新しのつさんからダンロップタイヤのモニターになってくれないかというお話があり、お受けしました」。それまでは海外製の安価なタイプのタイヤを使用していたが、昨年の春より73PSの後輪をバイアスタイヤのダンロップAR50に交換した。

 ダンロップタイヤは住友ゴム工業が展開するブランドで、交換用の農機用大型タイヤをラインナップに加えて市場投入。これまでこのクラスには国産バイアスタイヤのサイズ展開がなかったことから、できれば国産を使いたいとするユーザーの潜在的ニーズに応えるものとなった。今回のモニターの試みは住友ゴム工業初のもの。

 タイヤを交換したトラクタは主に整地作業を行い、その他、防除作業や除雪にも使っている。牽引力が必要で、使用頻度も高く、圃場間の移動も多い。ダンロップタイヤを使ってみての感想は、「それまでのものに比べ、すごく安定性があります。長距離を移動するときなど、路上走行時に感じますね。跳ねや揺れが少なく、乗り心地が良い」。ラグ山に均一性があり、ゴム質が以前のタイヤに比べて柔らかいとのことで「タイヤの基本性能が高い」と実作業を通しての実感を述べた。

 圃場が分散し移動時間は離れているところで25分ほど。トラクタに一日乗っていることもあり、乗り心地の良さは、プロ農家にとって重要な項目だ。「長時間作業していても疲労が少ないように思います」。また騒音も少なく、安定性の高さはそれだけ速く走れるということでもあり、作業効率の向上に繋がる。

 その他、作業をしていて感じたことは、「グリップ力が良いと思います」。作業機との相性も良いようだ。また、ダンロップタイヤはラグパターンが2段折れになっており、トラクションと排土性のバランスが良く、「タイヤの泥付きも少なく綺麗。泥の持ち出しが少ないと思いますね」。農道への泥の持ち出しなどに配慮している。

 今回、ダンロップタイヤをユーザーに紹介した吉田晃主任(JA新しのつ機械センター推進係)は「タイヤのトラクタへの装着性も良く、すんなりとはめることができました。無理な装着は故障の原因にもなります」。整備段階の作業性の良さも魅力となっている。また国産バイアスタイヤの大型用が展開されることで、ユーザーへの「提案の選択枝が広がる」と言い、サービス向上に繋がるとした。

 三上さんは機械センターから紹介を受けるまで、農機用のダンロップタイヤを知らなかった。「国産メーカーなので悪いものではないだろうと思っていましたが、実際使ってみると、期待以上の性能でした。タイヤでこんなにも変わるとは思わなかった。1度使ってみると、次にタイヤを交換するときもダンロップを使ってみようと思う。多少費用が掛かってもコストパフォーマンスは良いと思います」。三上さんの農業に新しい力が加わったようだ。

 三上さんが目指す農業は「面積をただ増やすのではなく、反収の上がる農家になりたい」ということ。そのためには細部に目を配らせる丁寧な経営が必要になる。どんなタイヤを選択するのかもその営みの一つだろう。それらによる積み重ねがプロ農家として目指すゴールへと導いていく。しっかりとした足元がその歩みに貢献する。


担当者の声

 この地域を担当しているのが住友ゴム工業産業タイヤ部の佐野諒氏(29歳)。「小型から中型までのサイズが中心だった私たちのバイアスタイヤに大型タイヤを加え市場展開しています。ユーザー様のご意見をお聞きし、今後は、もう少し上の100PSまでの大型トラクタに合致するものを増やしていこうと考えています。農地が集約されていく中でトラクタも大型化し、その中で国産ブランドのタイヤとして提案し、農家さんに貢献していきたいと思っています」と、今後の展開に対する意気込みを述べた。



サタケユーザー 枝豆の選別施設 枝豆は「品質もやはり秋田おばこ」と言われたい」      秋田おばこ農業協同組合

 

 秋田おばこ農業協同組合は平成10年4月1日、秋田県南部の大曲仙北地区1市10町3村にあった20JAが合併して誕生。基幹作物は米。園芸作物においては、ホウレンソウ、アスパラガス、枝豆、トマト、キュウリ、そら豆、モロヘイヤ、キャベツ、しいたけ、花きを重点推進10品目と定め、新品目の導入や収益性の高い栽培技術の普及を図るとともに、園芸振興拠点センターを中心とした集出荷作業の効率化に努めている。


▲多用途ベルト式光選別機BELTUZA▲高い品質の枝豆

 

 就農人口の減少や高齢化をいかに食い止めるか。今、日本の農業は大きな岐路に立たされている。生産者の平均年齢は66.8歳。高齢を理由に生産を縮小する者も少なくなく、生産力の減退が大きな課題となっている。こうした中、地域農業の維持・活性化を目的に、より収益性の高い作物への転換、農家所得の向上を図ることも農協の役割の一つ。今回取材した秋田おばこ農業協同組合(JA秋田おばこ)も、米の取扱量・販売高ともに全国一を誇る米の産地である一方、一昨年、昨年と連続して東京都中央卸売市場7~10月の枝豆入荷量日本一を達成した秋田県の枝豆生産の中心的産地として積極的に園芸品目の導入・拡大を進めている。今年6月に組合長に就任した原喜孝氏(60歳)に、枝豆を中心とした園芸作物の拡大戦略と今後の展開について話を聞いた。

 JA秋田おばこでは、基幹作物の米による収入が農家所得の9割近くを占めるが、米余りや米価の下落が続く中、どうやって農家の所得を維持・確保するか、その答えの一つが園芸だった。園芸作物の平成28年の販売高は26億円。それを平成30年に30億円にする目標を打ち立て、組合全体で思いを一つにして取り組んでいる。その戦略の柱を担う主力作物の一つが枝豆で、県の市場出荷量の約3割をJA秋田おばこが占めている。現在の作付面積は約200ha。来年はさらに50ha増やしたいと原組合長は意気込む。「農家にしてみれば、枝豆は昔から作ってきた作物で馴染みがあります。また水田と同じ圃場でできるところも、農家にとってはメリットになっていると思います」。ただ、生産者からは、人手が足りず、面積や収量を増やしたくても増やせないという声が聞こえてきた。とりわけ収穫後の選別や袋詰めはすべて手作業で行うため多くの労力と時間がそこに費やされていた。「まずは、その辺りの一番手のかかる部分を排除してあげよう。それから規模拡大を目指していこう。そういう経緯で導入したのが“JA秋田おばこ枝豆選別施設”です」。今年7月、国の産地パワーアップ事業を活用し、農協畜産課の既存施設内に、サタケの多用途ベルト式光選別機BELTUZA2台を核とした共選場を新設した。農家で粗選別・洗浄・脱水した枝豆は各集出荷所に持ち込まれ、その後、共選場にて光選別機による選別、手選別を経て計量、袋詰めされる。

 稼動開始から約1ヵ月。原組合長は大きな手応えを感じている。この間の出荷量は当初の見込みを上回り、「うれしい誤算」。さらに、「ここまでは農家がやって、この先は共選場に持っていってやってもらおうと徐々に作業の流れがわかってくれば、その分の余剰労力を別の作業に向けることができるわけですから、来年はもっと期待できると思いますよ」。目指すところは、「品質もやはり秋田おばこだなと言われるぐらいの水準にまでもっていくこと」。選別に手間がかかれば、その分収穫が遅れ、刈り取りの適期を逃し、莢が膨らむなどのロスが生じる。「ゆくゆくは粗選別・洗浄・脱水も農協でできるようになれば、農家はもっと楽になります。そうなれば、2~3町歩の農家も、ある程度年配の方も、“ちょっと枝豆をやってみようかな”という気になると思います。高齢になっても、長年の経験で“病気がついているな”、“肥料が足りないな”という目利きはできますからね。農協が収穫から共選まで行えば、自ずと面積の拡大は図れると確信しています」。

 もう一つ、共選を導入して良かったことがある。光選別機によってはじかれた規格外の豆も、一定量になるため、管内の農業法人を通じて豆を莢から取り出し、冷凍して加工用に学校給食やホテルに提供している。それがまた農家所得に跳ね返る。「枝豆でもトマトでも、切り口はいろいろありますが、農協が勧めたことをやってみてそれが所得向上に繋がっているという実感を持ってもらえれば、それでOKだと思っています」。

 枝豆の販売高は約4億円。それをまずは5億円にして園芸の太い柱にする。「国道105号沿いに行けば、秋田おばこが何をやりたいのか、この地域がどういう農業をやろうとしているのか一目でわかる施設が並んでいます」と原組合長。また、そういう農協作りを目指している。今回の枝豆選別施設もその一つで、荷受けから袋詰めに至るまで、ラインの地点、地点で重量を計測し、すべてパソコンでデータを管理している。「若い人は、IT化、データ化された農業でないと、なかなか飛びつきません。データに合わせた無駄のないことをきちっとやって、費用対効果をどれぐらい出すか。そういうところで競っていくのだと思います。またそういう人を育てていきたいと思っています」。

 若い人にいかに魅力ある農業を提示できるか。後継者不足も高齢化も、突き詰めればそこに課題解決の糸口がある。その一助を担うのが機械であり、できる部分は率先して機械化することにより、農地の縮小や農家数の減少を食い止める道が開けるかもしれない。JA秋田おばこの取り組みがその好事例で、共選場を導入し、マンパワーが必要なところを農協が受け持つことで、産地指定を目指せるだけの品質力の高い作物の生産が可能となる。ひいてはそれが農家所得の向上に繋がっていく。


導入機種:多用途ベルト式光選別機BELTUZA CSV600BI×2台


サタケユーザー   米の直売・加工「ピカ選に対する感動が信頼に繋がっています」            秋田県大仙市 株式会社RICE BALL(代表取締役:鈴木貴之)

 

  秋田県の仙北平野で75haの大規模稲作農業を経営。品種はあきたこまち一本で、特Aの良食味と若さを武器に、大都市圏へのお米の直売から、現在は農家直営の手づくりおにぎり専門店を展開している。その歩みが稲作農業の未来に繋がる。


▲鈴木さん▲商品価値を高める美白米ユニット

 

 様々な課題を抱える日本農業だが、その多くは、“いかに産業としての持続性を確固としたものにしていくのか”ということに収れんされていく。生産調整が廃止となり、より自立した農業へと変貌する事が望まれており、各地の生産者は自らの足で未来に向かって歩いていくことを懸命に模索している。その中で、鍵となるのが収益性の確保と後継者の育成。言葉で言うのは容易いが実行は難しい。ただ、各地で様々な取り組みが行われており、“疾風に勁草を知る”ようにして、その中からそれらを形にする生産者が少なからず顕れてきている。今回取材した㈱RICE BALLもそんな生産者の一つ。抜きんでた行動力で着実に成果を積み上げ、稲作農家の明日の姿を示している。

 ㈱RICE BALLは秋田県大仙市の仙北平野を舞台に、大規模稲作農業を展開する若手生産法人。代表取締役の鈴木貴之さん(42歳)に話を聞いた。平成21年に設立され、まだ10年にも満たないが、規模は昨年が70ha弱で今年は75ha。手がけるのはあきたこまちただ一つ。「この辺りで作るあきたこまちは特Aと高い評価を受けています。気候や水、場所に恵まれています」。また極力化学肥料を使わず、こ糠や鶏糞などの有機肥料を使用。それらが合わさって、良質米が生み出されている。生産者にとっては心強い競争力のある商品だ。しかしRICE BALLの本領はここから。この米をどうやって売るのか、利益に変えていくか。その問いかけと実行が歩みを進める原動力となっている。

 元々同社の始まりは、生産より販売が先にあって、鈴木さんがまだ農業に携わっていない頃、実家のあきたこまちが大阪の知り合いに10kg4000円で売れたことから、「これはビジネスになる」と直感し、起業。サンプルの米を持って首都圏で販売先を開拓し、飲食店を中心に飛び込み営業を行い、販路を開拓。合わせて大規模農家の農作業をサポートし、秋にお米を仕入れてそれを販売した。その後農地をもって生産するようになり、順調に事業を拡大していった。

 RICE BALLが生産するお米の魅力は一つに味。それを食味分析によって数値化しタンパクの含有量などを見える化する。「これが販売の時のアピールになります。生産方法を言うより数字を見て貰った方がわかりやすい」。根拠のある言葉は説得力を持つ。更なる魅力は「自分たちです。若手が作るお米がブランド力です」。高齢化が進む日本農業にあっては大きな価値だ。魅力ある農業で既成概念を変えていく。その中で今、力を入れているのが、手づくりおにぎり専門店の展開だ。

 ご飯1合でおにぎりが2つできることから「1日1合のお米を食べてもらいたい」という思いをもって店名は“ONIGIRI ICHIGO”。現在東京の代官山に本店があり、兵庫県に3店舗出店している。「農家直営店というのが大きな特徴で、“百姓が握るおにぎり”というのがコンセプト。田舎から都会に乗り込んできましたというイメージです」。自分たちが作った秋田県産あきたこまちを使い、中でも2㎜以上の大粒を厳選。コンビニのおにぎりより一回り大きく、ふっくらした手むすびで提供。そのこだわりのおにぎりは消費者にも好評で、「食べたお客さんが美味しいからと、今度はお米を買いに来てくれることがあります。それが嬉しいですね」。

 直営店のメリットは「作った米を販売する店を持つことで営業に行かなくてすむこと。多店舗展開ができれば、新しい農業の形になると思います」。また自らが店を構えることで、「利益がしっかりと計算できる」。加工による付加価値で利益率も高く「非常に優良な事業だと思います」。食べたおにぎりが美味しければリピータとなり、さらにそれだけではなく、お米そのものの販売にも繋がり、事業としての可能性は大きい。今後も店舗を増やしていく計画となっている。

 鈴木さんは「農業をビジネスにしたい」という思いがあり、「自分たちの会社を一般企業と同じようにしたい」という。農業全体を見れば、まだまだそんな状態にはなく、それを変えていく過程を“百姓一喜”という言葉でも表す。様々な取り組みの先に「百姓の喜ぶ」姿を求める。

 その事業の根幹にはいかに販売するかということがあり、生産者から消費者の間にある商品価値を高める機械の役割も少なくない。そこで活躍しているのがサタケの乾燥調製機器だ。「事業を始めて最初に導入したのが精米機です」。まず直売から始めた鈴木さんの経営には欠かせないものだった。そして光選別機ピカ選を導入。「この機械にはすごく感動しました。何故あんなことができるのか不思議です」。作っておしまいの農業ではなく、人の口に入るまでを考える農業では実需者の信頼を得る大きな力になった。「その感動があったので、それから乾燥調製機は一式サタケにしようと思いました」。今では72石の遠赤外線乾燥機ソラーナGRANDが5台、5インチの籾摺機ネオライスマスターが1台、さらに初代精米機の後継機として美白米ユニットが昨秋導入されている。精米、石抜、光選別、計量がユニット化されたもので、事業拡大に伴う作業の効率化に貢献する。また全てをサタケ製品に揃えたことで、乾燥調製に関しては何かあったときの対応がスムーズに行く。「いつもきっちり対応してくれて満足しています」。

 “米を作って売る”。言葉にすればシンプルなビジネスモデルだが、“売る”ということはそんな簡単なことではない。それゆえに販売を人任せにする方法が大勢になったわけで、それを考えればRICE BALLのこれまでの展開には目を見張るものがある。若さを武器に、既成概念に捕らわれず、思いやアイデアを次々形にしていく行動力が、農業をどんどん明日に進めていくに違いない。そこに機械の果たす役割も小さくなく、その歩みをしっかり支える品質の確保にも貢献している。

 どこまで行くのか、行けるのか。日本農業の未来の一つがその姿と重なった。


導入機種:美白米ユニット×1基、光選別機ピカ選FGS-2000×1台、遠赤外線乾燥機ソラーナGRANDSDR72LEZG×5台、ネオライスマスターNRZ550GWAK×1台


松山  「あぜぬり機03シリーズ」新機能で締まったあぜを成形

取材先:㈲豊浦中央ライスセンター 大倉均社長さん 

 

  2018年には生産調整が廃止。生産者の自由な経営を奨励し、規模拡大を進め、生産コストの低減を図りながら利益の出る農業へ転換していく。平場で展開する土地利用型農業の青写真だが、このシナリオがどこまで実現できるのか。舞台は現実。各地様々な条件のもと、筋書き通りとはなかなかいかない。気候や風土、土地の条件、地域生産者の農業への思い入れ、それぞれが地域によって異なる。ただ、その中で最適の選択を求めるのなら、与えられた条件の中で如何に生産性を上げていくかということには繋がるはずだ。そこに農機の果たす役割がある。


▲きれいなあぜが成形される▲新機能であぜを締める

 

 今回の舞台は新潟県新発田市の旧豊浦町。広々とした場所に水田が広がり、訪ねた時期は今シーズンの米作りが始まろうとしている頃合い。その中で土地利用型の大規模農業を展開するのが㈲豊浦中央ライスセンターだ。20年以上前に設立し、地域農業の担い手として事業を運営している。そこで代表取締役社長を務める大倉均(61歳)さんに、新規導入したあぜぬり機について話を聞いた。

 現在、豊浦中央ライスセンターの経営規模は約40ha。「コシヒカリが25%で、後は飼料米、酒米など、今年は7品種ほど生産し、転作では大豆を作っています」。メインの労働力は大倉さんを含めて3人。その内1人に息子の翼さん(32歳)が後継者として加わり、持続性をもった経営となっている。その中で意欲的な農業が実践され、新潟期待の新品種“新之助”の栽培、鉄コーティング直播の取り組みなど、水稲栽培の商品力アップ、低コスト化、省力化を図り、積雪が1mほどにもなる冬場の時期は、ハウスでオータムポエム(アスパラ菜)の栽培を行っている。

 水稲栽培を中心に、利潤の最大化、経営の効率化を考えた積極的な農業展開だ。しかし比較的恵まれた条件にある平場の農業と言えども、生産環境はまちまちで、この地では「基盤整備ができていない所が殆どですので、圃場は大体20aほど。経営している圃場の枚数は200枚を超えています」。それを3人で日々管理していくことになり、大きな労働負担となっている。

 そのため今の経営規模をさらに拡大していくのなら人手の確保が必要となってくるが、人を雇えば「忙しい時期だけと言うわけには行きません。その人の生活を考えて年間を通じた仕事を作っていかなければなりません」。通年雇用をどうするのか。簡単にはいかない所だ。そこで、現状では機械を駆使して如何に効率良く作業をしていくのかに重きを置き、機械装備を充実。「楽ということは、長く続くということ」。それが経営の持続性を図ることに繋がっている。その中で今年導入したのがニプロの新型あぜぬり機リターン03シリーズLZR353NJC。

 あぜぬり作業は3月下旬から始まり、「作業受託の分も含めて距離にすれば60kmほどにもなる」手間の掛かる作業。四隅もしっかりとあぜを成形する丁寧な作業を心掛け、これまでも10年以上に亘ってニプロのあぜぬり機を使用。「故障らしい故障は無かった」と期待に応え続け今回もニプロでの更新となった。

 「この辺の土質は少し軟らかくて、あぜ成形の難しいところが多いですね」。雨などで水分が増えるとさらに条件は悪くなる。また「田んぼ一枚一枚に特徴があり、高さもそれぞれで、決して均一ではありません」。その中で「動散など重いものを背負って行き来しながら作業しても崩れないしっかりとしたあぜ」の成形を目指して作業が行われている。そのためには「単なる機械任せではうまくいきません」。土量や湿り具合などをみて、長年の経験による調整をしていかなければならず、機械選びには「軟らか気味の所でも、手加減がうまくいきそう」かどうかの、人の感覚に対する対応力なども考慮されている。また今回導入したあぜぬり機には、独自に改造した除草剤の散布装置も搭載し、あぜぬり作業と同時に除草も行い管理作業の省力化を図っている。

 実際に使用してみての感想は、作業機が通り過ぎた後に成形された綺麗なあぜを振り返って、開口一番「バッチリだね」との言葉。「全体の調整が簡単で安定感がある。電動のリターンも手間が掛からない。まだ慣れない所もありますが楽です。以前のものに比べて、作業精度が高くなっているように思います」。調整作業は1シーズンの中で何百回と繰り返すわけで、そこがスムーズにいけば大きな省力化に繋がる。

 「あぜ自身のでき具合も良いよ。これならば崩れません。どうしても土量が足りないと表面が粗くなりますが、これは密度が詰まっている」。高さのあるあぜでは、「土を掻き上げるのに苦労していた」が、充分な能力を発揮しているようだ。シーズンを通して痩せていったあぜが充分な土を送られて、しっかりとしたボリュームに回復していく。

 新型あぜぬり機は上面ローラーがらせん条になったスパイラルローラーとなり、その段差が土を抱き込むようにしてあぜ上面を固く締めていく。「以前の平面なローラーに比べて、上からつぶす様な感じで良いですね」。しっかりと締まったあぜを作る。また土を塗り込むディスク部は新開発のネオウィングディスク。8枚のディスクが独立して、摩耗等による交換が容易。「自分で交換しているので手間が掛からないのは嬉しい。それに振動が少ないように思う」。労働負荷を軽減する事にも繋がっている。さらにクラッチジョイントを標準装備。シャーボルトの交換が不要になり「過負荷時の復帰がかなり楽」と満足そうな笑顔を見せた。様々な田んぼの条件に応じてしっかりとしたあぜを効率良く作り、春の慌ただしい作業の大きな力になりそうだ。

 大倉さんの楽しみは、農作業の中、「ふと四季の移ろいを感じること」。日々の仕事に追われてしまいがちだが、新しい機械ならそういう余裕も生まれてきそうだ。

●ニプロあぜぬり機03シリーズAUZ303C/353C、SZ253、SZR303、DZR303C、LZR303C /353C

 《主な特長》①格納時と作業時の切り替えができる「オフセットシリーズ」と、作業部をリターンさせることでぬり残し部分をバック作業で機械ぬりができる「リターンシリーズ」をラインナップ。②あぜを成形してゆくディスクは新開発のネオウィングディスクを全型式に採用した。上面を成形するスパイラルローラーとともに固いあぜを成形する。また8枚のディスクはフック2か所とボルト2本でベースディスクにとめてあるので、簡単に1枚ずつ交換できる。③AUZ03、DZR03、LZR03の各型式は機体の損傷を防ぐクラッチジョイントを採用している。石の多い圃場でもトラクタから降りることなく作業をすることができ、作業能率も向上する。


サタケユーザー 9台の乾燥機で効率作業「本当に楽に作業ができるようになりました」     岐阜県海津市 有限会社福江営農(代表取締役:後藤昌宏)


 
 340haにも及ぶ経営面積で大規模農業を展開。地域農業の頼もしい担い手として強い存在感を発揮している。その営農を実現するために、水稲・小麦・大豆の2年3作の輪作体系、効率的な大型農機、労働量を低減する省力栽培技術体系などを導入している。日本農業の一つの未来が垣間見える。

 

 
▲代表取締役の後藤さん▲ソラーナグランドが9台設置されている

 

  今回お訪ねしたのは岐阜県の最南端に位置する海津町。木曽川、長良川、揖斐川の三大河川が合流する地域にあって、海抜が0~4mと低く、輪中を形成し、古くはその中で、沼田の土を盛り上げた“堀田”が作られ、田舟で苗を運ぶ農業が営まれてきた。しかし昭和20~40年代に入ると排水施設の整備が進められ、堀田が埋められ地域の農業が大きく変貌していく。そして昭和55年度から大規模営農に対応できるように国営長良川用水事業などにより、圃場の再整備が行われ、1~2ha区画の大規模な汎用化水田が整備された。
 大規模区画で大型農機を導入した効率的な農業を営むことができるようになり、日本農業を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域農業の持続を図るためにこの地において営農組織が立ち上げられた。
 それが今回お話を聞いた有限会社福江営農の始まりで、昭和58年に土地利用型農業における地域の担い手として設立された。「それまでは施設園芸をやっていたのですが、国の先導的稲作技術改善特別事業の認定を受け、まずは利用集積された集落内の10haの水田で営農を開始しました」と、同社代表取締役の後藤昌宏さん(56歳)が当時の状況や現在取り組んでいる農業について教えてくれた。


 地域の信頼を獲得し、「農業の変化が追い風」となって、面積を順調に拡大。平成19年には、品目横断的経営安定対策へ対応するため、部分作業受託の農地についても利用権設定を進め、水稲167ha、小麦141ha、大豆155haまで拡大。「農地集積が一挙に進み、それまでの経営と実績が評価されこの年に農林水産祭の農産の部で天皇杯を受賞させて頂きました」。小規模な堀田から、大規模区画で土地を集約した農業へ。日本農業の歩みの一端がそこに窺われる。天皇杯を受賞した年に、福江営農では代表が先代から現在の後藤昌宏さんに代替わりし、地域農業の担い手として更に前進。「現在は全面受託している経営面積が約340ha」になっている。また同地域では従来水稲単作体系だったが、水稲・小麦・大豆の2年3作輪作体系を確立し、飼料米を含む水稲が約220ha、小麦、大豆が約120haで栽培されている。これを役員3名、従業員12名を中心にパートの人々も加えた形で展開。この面積をこの陣容で経営していくために、作業を分散させるための品種構成、効率的な作業を実現する大型農機、作業そのものの手間を減らす省力栽培技術などを積極的に取り入れている。
 「水稲の品種は早い方から言うと、あきたこまち、コシヒカリ、あさひの夢、縁結び、モチミノリ、ハツシモ、みつひかりで、8月10日くらいから11月の上旬ぐらいまで稲刈をしています」。メインはあきたこまちで、「台風が来る前に収穫できるものを多く作っています」。また、減農薬・減化学肥料の栽培で一部の品種は有機肥料を主体に使い品質においても高い水準を目指している。
 作業を効率的に進めるために大きな力となっているのが大型農機。無人ヘリ、レーザーレベラー、除草剤同時散布の側条施肥田植機などを活用し、また、乾田直播も取り入れて、省力化と作業時間の短縮を進めている。
 販売ルートはJAの他、「殆どは近くの卸しに売っています。それとハツシモは自分たちで直売しています」。ハツシモは岐阜県で栽培されている晩生種の品種で、国内産米の中でも1、2を争うほどの大粒。梅雨時期を過ぎても食味の低下が少なく、年間を通じて品質・食味が安定している。このお米をPRするために6次産業としておにぎり屋も展開している。
 これまで比較的順調な経営を続けてきたが、その中で苦しかったのは「近年の米価の下落」。大規模農業を展開し、低コストで効率の良い作業を実現しても、近年の価格では厳しい。それを打開するための直売や6次産業の試み、飼料米などの栽培であり、「さらなる低コスト化と効率化を進める」。そこに農機の果たす役割も小さくないようだ。


 そんな状況の中、平成25年に事務所とそれに隣接したライスセンターを新しくした。サタケのソラーナグランドSDR82LEZGが9台設置されているのを始め、同社の籾摺機GPS8000A、石抜機GA30RB、米麦選別機NVG60Vが各2台、フレコン計量ユニットSFK1000が1台組み込まれ、効率的なラインを構築している。「私たちの所では1日に700俵ぐらい出します。その張り込みから出荷までの作業を3人で行います。内1人は女性です」。以前は、乾燥の後は籾摺という流れで、次から次ぎに処理をしていかなければ、刈り取った籾を乾燥機に入れることはできず、乾燥待ちの籾が溜まってしまい、「それを処理するために夜遅くまで作業をしていた」。しかし新しいラインでは、各乾燥機に保冷タンクを設置し、乾燥後の籾を留める余地を作り、スムーズな作業となっている。また集塵機を設置することで、クリーンな作業環境を確保している。
 「建屋を新しくする時にどのような施設にすれば良いのか、機械だけでなくラインの設計もサタケさんがしてくれました」。注文された機械をただ設置するというのではなく、ユーザーが実践している農業において、何が求められているのかを考え、その課題解決になる提案をすることが、生産者の利益に繋がる。「本当に楽に作業ができるようになりました」。実感のこもった声が聞かれた。乾燥機については、「早く乾いて品質も良い」とし、8インチの籾摺機も自動機能が充実し評価は高い。
 乾燥調製施設は8月~11月までの稼働で「乾燥機の使用は年間1000時間弱にも及ぶ」。しっかりとした事前の点検・整備でプロの仕事をサポートしている。「これまで問題なく安心して使ってきましたので、信頼しています」。


 TPPが大筋合意となり農業環境が変化する中で、「今後どうなっていくのか不安が大きいですね」。大規模農業の先端を行く後藤さんにとっても先行きの不透明感は拭えないようだ。しかし地域では現在、耕作放棄地がなくその状況に貢献している事も事実。地域密着型で農業を明日に繋げる頼もしい姿がこれからも見られるに違いない。



導入機種:遠赤外線穀物乾燥機ソラーナグランドSDR82LEZG×9台、籾摺機グルメマスターGPS8000A・GPS8000AC、 石抜機ピックストーンGA30RB×2台、選別計量機ネオライスグレーダーNVG60V×2台、計量設備フレコン計量ユニットSFK1000×1台
 


松 山「グランドロータリー」高い性能で耕うん作業を効率化

 農業を取り巻く環境が大きく変化している。1942年に食糧管理法が制定され、食料確保と価格安定を目的に政府の介入が長年行われてきたが、食生活の変化や農業技術の進歩で、米余りとなり、減反が進められ、約20年前の1995年には食管法が廃止。その時点で60kg2万円を超えていた米価は、バブル後のデフレや米消費の減少を受け、現在は農協の仮渡し金が1万円を割る事態にまで至っている。しかしそれでも各地では農業を続ける営みが懸命に行われ、その側で生産者を支える農機の果たす役割は益々大きくなっている。

   
▲高い埋め込み性能を発揮する ▲内部に土が付着しにくい構造

 今回、現場通信でお訪ねしたのは1月にニプロのグランドロータリーSKS2000を導入した小牧博良さん(69歳)。「若い頃と違って年々作業が辛くなる。重い物を持つのも骨が折れる」と長年農業に取り組んできた実感が言葉にこもる。手掛けるのはコシヒカリとあきたこまち。茨城県稲敷郡の河内町で4.5haの田んぼを奥様の富美子さん(68歳)と2人で耕作している。この地域は県南の利根川流域にあり、昔から関東の米所として知られ、良質の米が産出される。小牧さんが収穫したお米は現在、「親戚でお米を扱っている人がいるのでそちらに卸している」とのことで、コシヒカリは味の評判もよく、「買いたい」と指名してくる人もいる。ただ、だからと言って、規模を拡大するという方向にはない。「今は田んぼの仲介を役場がしているので、申し出れば面積を増やすことは出来るが、増やさないことにしている。これ以上増えると体がもたない」。40歳前の息子さんがいるが、勤めに出ている状態で、歳を重ねる中、夫婦でできる範囲の農業が実践されている。「普通の生活ができて、農業が続けて行ければ良い」。多くの生産者が抱く切なる願いだ。
 小牧さんが農業を始めたのは、昭和39年の東京オリンピックの頃。「この辺りは昔、本当に米だけで、代々ここで農業を続けてきた」。地域の人間も農業に熱心で、まだ牛などの畜力が農業の主役だった頃、「荷車に土を積んで牛に引かせ、毎年のように田んぼに入れた」。その努力もあって土質が改善。また区画整理が入る何年も前に「共同で暗渠を作った」。そんな取り組みが積み重なって段々とお米の質が良くなっていった。その一つの証として地域のお米は皇室献上米にも選ばれている。
 かつてお米を作って生活することが農村で当たり前だった頃、「お米の値段も良かったので、4町もあれば生活に困らないだろうと親が農地を増やした」が、今となっては充分な収入には結びつかない状況で、生活するための収入を稼げないことが農業を継ぐことの難しさとなっている。「百姓で食べていければ良いが、今では商売にならない」。地域農業を持続するための大きな課題がそこにある。
 その中で農業を続け、体への負担も年ごとに増している。「籾すりをした後、30・の米袋を重ねていくのは辛いし、追肥のため田んぼの中に入って、重い散布機を背負って作業するのは大変」。奥さんの富美子さんも農業をしながら、家のこと、親のお世話など、やるべきことが多い。その負担を少しでも減らすため、効率的な農機の活用は無くてはならないものになっている。
 その中で1月に井関農機のトラクタNTA403を購入。「トラクタを買うときにどうしようかと悩んだが、自分で農業を続けるのなら買うしかない」。その時に一緒に導入したのがニプロのグランドロータリーSKS2000だ。
 導入前の作業は、稲刈の後、春の田植までに4回田を起こし、ロータリー耕で稲ワラや雑草を埋め込み、基肥を鋤き込み、代かきへと繋いでいく。「秋が終わって12月までに2回、正月を越してから2回」。グランドロータリーはその毎年の工程に変化をもたらそうとしている。近隣に小牧さんより先に導入した生産者がいて、その作業を見ると「前のロータリーだと2回目の耕うんで、ようやく稲ワラなどが埋め込まれるが、グランドロータリーは、1回で細かくなってその状態になっていた」。それは小牧さんの作業工程を短縮することに繋がる。
 グランドロータリーは、新開発のJ500G爪と均平板の支点位置を上げることで広い反転スペースを確保し、それにより今までにない鋤き込み性能を実現している。小牧さんが実際に耕うん作業を行ってみると、「埋め込み性能は良い。土も細かくなる。大変綺麗だ」との感想。導入して間もなく、まだ充分な稼働時間はないが、率直な物言いから確かな手応えが窺えた。「秋からの耕うん回数が減らせると思う。私の場合、トラクタに乗っていると、後ろを見ながら作業して腰が疲れてしまうが、乗る回数が減って体の負担も少なくなる」。軽労化を実現し、工程の縮小は省エネにも繋がる。均平板の上下にはアシスト機能もあり、「あれは楽で良いね」と腰への負担も少なそうだ。
 また「前に使っていたロータリーは田んぼから随分土を運んだ」とのことで、道路やトラクタの置場所に落ちた土を片付ける作業があったが、「新しいロータリーはカバーがゴムで土付きが少ないようだ。その分手間が少なく、余計な仕事をしなくてすむ」。耕うん部のカバーがラバー製で、土塊が当たる衝撃で絶えず土をふるい落とすので、土が付着しにくい構造になっている。また均平板の上部にもラバーを採用し、下部はステンレス製で付着を抑える。作業の負荷を低減すると共に土を田んぼの外に持ち出すことで発生する手間を少なくする。
 本領を発揮するのは今年の秋からだが、実作業での高い性能に期待を示しつつ、「良いんじゃないの」と笑顔で語ってくれた。
 作業効率を高めることで体への負担を少なくし、経費の削減にも繋がる。農業を続ける大きな力になりそうだ。
●ニプログランドロータリーSKS1800(D)/2000(D)
 《主な特長》①J500G爪と、均平板の支点位置を上げる事で出来た広い反転スペースの作用で、高いすき込み性能を実現。またJ500G爪はたたき破砕部を設け、砕土性能がアップ。均平板が長く整地性能が向上。②耕うん部カバーのフロートラバー、均平板上部のアッパーラバー、均平板下部のアンダーステンレスカバーにより土の付着を大幅に抑え省馬力で快適な作業を実現。③ダブルフレーム構造で機体全体の剛性がアップ。耕うん軸のフランジは10mmの厚板にし、J500G爪は幅広の爪で磨耗を抑える。また爪と爪のオーバーラップを大きくする事で残耕を防止する。SKS2000は4S/3S仕様に強化ジョイント仕様を設定(区分「D」)。

 

大島農機「遠赤乾燥機NXシリーズ」ブランド米で地域を活性化する

 「中山間地の農家がコストの競争をしたら絶対負けます。ブランド化して、こだわりの米を作っていくしか生き残る道はありません」。その言葉を実践し、岐阜県の下呂市で品質の高いブランド米を作り、多数の賞を受賞してきたのが源丸屋ファーム代表取締役の曽我康弘さん(57歳)。日本農業が持続していくための一つの道を示している。そこに中山間地で農業を続けていくためのヒントを探る。その生き残るお米作りに大島農機の乾燥調製機が活躍している。

銀の ▲NXシリーズが大活躍

 曽我さんが力を入れて生産しているお米は“いのちの壱”。2000年に下呂市で発見された品種で曽我さんたちの栽培グループでは“銀の朏(みかづき)”という商品名で発売している。「一番の特徴は粒の大きさで通常のコシヒカリの1.5倍、千粒重にして32gあります」。また甘みと粘りが強いのも特徴で「味が濃い」と評価する人も多い。しかしどこで作ってもそのような特徴のお米になるというわけではなく、飛騨のその地域で作ってこそ、その特性が最大限に発揮される。「この品種は高温障害に非常に弱く標高400m以上でないとうまく育ちません。標高の低いところで作ると粒が小さくなります」。曽我さんの栽培地は標高400~700mの間で、真夏でも夜は20℃ぐらいまで下がり、山間地特有の寒暖の差が大きく、登熟期間が長くなることなどから、しっかりと大きな粒になる。また、お米を育む水は山から流れてくるもので、“美人の湯”として知られる下呂温泉と同じくPHが高く、マグネシウムを多く含む。それが魅力的な品質に繋がっている。
 「魚沼産のコシヒカリに勝ちたい」と高い意欲を持ち、現在、曽我さんを含めた栽培グループで約40haの栽培となっている。販売先は、地域にある下呂温泉の旅館やお土産物屋、卸、お米屋、ネットショップなど。ブランド米として、農家が意欲を持って再生産できる価格に設定し農業の活性化を図るとともに、「このお米を食べに下呂温泉に来てもらいたい」と、地域の魅力を高める事にも貢献している。
 そのお米の力を十分引き出すためには、ただ、品種が持つポテンシャルにだけ頼るのではなく、その時にできる「最高のものを提供したい」と、ブランドに対する期待を裏切らない様々な努力が行われている。「青空教室をしたり巡回で見て回ったり」、土作りには有機肥料を使い、農薬も大幅に減らした栽培が行われている。肥料に関しては、毎年研究を重ね、「これを使えば日本一になれる」というようなオリジナルの肥料をメーカと協力しながら開発し、販売も行っている。
 また「休眠が深く、普通に苗を作ると6割ぐらいしか発芽しない」と栽培の難しさもある。通常の自然環境の中では生き残っていくことが難しかったお米のようで、その分、栽培に高い技術が求められる。
 収穫後の乾燥調製においても、粒が大きいため胴割れを防ぐ工夫が求められる。普通のお米と同じような調製方法をしていると、「胴割れとなって、ロスが沢山発生する」。そこで大きな力を発揮しているのが大島農機の遠赤乾燥機NX27だ。「じっくりと水分を落としていく方法で、普通のコシヒカリの2倍から2.5倍の時間をかけて乾かしています」。一般的な自動設定では難しいこともあるが、NXシリーズでは狙いの温度に設定する定温乾燥などで、シビアな要求に応えていく。「プロ好みの設定ができる」と満足度は高く、高品質なお米作りに貢献する。このやり方で「殆ど胴割れはありません」と効果は大きいようだ。食味に関しては、同地域でNXを導入した他の農家の言葉を借りると、「それまでこだわっていた、はざ干しよりもNXで乾燥した方が美味しい」とのことで、ブランド米の価値を高めることに役立っている。
 今年で3年目を迎える乾燥調製施設には27石のNX27を3台設置。中山間地にあって田んぼ1枚が小さく、「大きなものより、数があった方が良い」とのことで、さらに増設する余地も残している。また施設の建物が木造になっていて、「林業振興の目的もありますし、木だと暖かい感じがする」と曽我さんの要望を充分汲み取った乾燥調製施設となっている。
 施設には乾燥機の他にも大島農機の籾すり機MRP550Z-G、粗選機“あざやか”BG60などを設置。籾すり機は5インチクラスで「プロ用だけあって、段違いに良い。安心して使える」と評価は高い。揺動選別板が大きく高精度な選別ができ、専用モーター搭載で、籾の供給が無くなったら選別板だけを自動停止。またゴムロールの隙間も自動調整する。「手間がかからないし、プロのニーズに応えてくれる」。
 この施設を作る前の乾燥調製作業は、「全て別の農家にお願いしていました」ということで、“銀の朏”を生産するにあたって、繊細な調製をする必要を感じての設備導入となったが、その分仕事が増えることにもなった。そこで配慮されたのが無人運転が出来るようにする事。「機械の側についている必要がなく、稲刈りをしている間、寝ている間に仕事をしてくれます」。省力化にも大きく貢献している。また、それまで乾燥作業などで支払っていたコストを削減することになり、利益に繋がっている。「投資効果はありました」と笑顔を見せた。
 曽我さんの現在の経営規模は、自作地が11haで作業受託が30ha。地域では高齢化も進み、農業を止める人もいて、今後その規模は増える方向にある。それに対応するためには「人手が必要」だが、思うようにならない現状もある。その中で、乾燥調整機を含めた機械の果たす役割は小さくないようだ。
 「ブランド化して、こだわりの米を作っていく」曽我さんの農業は最近輸出にも向かっている。「少しずつですが、ニューヨーク、中国に輸出し、今パリからもお話を頂いています」。農業を持続していくための一つの活路がそこにある。それを可能にしているのは、なんと言っても“銀の朏”という商品が持つ魅力だ。品種が持つ大きなポテンシャル、それを十分引き出すための生産者の智恵と工夫、そしてそれをサポートする農業機械。それらが合わさって、ブランドの大きな力になっていると感じた。中山間地が生き残る一つの道がそこにある。

遠赤乾燥機NXシリーズ
 《主な特長》①放射体は流れ板に接近し、しかも平行に長い距離で遠赤外線を照射する有効な形状。また遠赤熱源の熱風と外気を効率よく取り込み、ミックスされた温風が機内にムラ無く広がり乾燥を促進。穀物の隅々まで熱を伝えて美味しい品質に仕上げる。②排塵ファンには静音性に優れた遠心ファンを採用。また昇降機及び本体上部の騒音は防音板を組み付け循環音を静かに。③粗選機構を組み込んでゴミ・切ワラを集中排塵。

 

オーレック「ハンマーナイフローター」野菜作の草刈に貢献

 農業従事者の高齢化が進んでいる。それに伴い耕作を諦める農家も増え、農村の活力も減退していく。特に中山間地では、その傾向も強く、地域農業を如何に持続させていくかは大きな課題だ。意欲的な生産者に農地を任せるというのが一つの方法だが、小区画の棚田や何年も耕作放棄された所、獣害のある山際の圃場など条件が不利な場所も少なくない。ただ、昼夜の寒暖差が大きく農産物の食味を上げるという魅力もある。そんな中山間地を利用して野菜を作っているが日下さん。その農業にオーレックのハンマーナイフローターが活躍している。

 

     
 ▲日下訓志さん   ▲ハンマーナイフローターが大活躍

 

 

 

  和歌山県田辺市に住む日下訓志さん(45歳)が農業に取り組み始めたのは37歳の頃。それまでは公務員として働いていたが、より自分に合った仕事をという思いから、この道に。まずは祖父が営んでいた山間地の梅畑1haを引き継ぎ数年経営していたが、思うように利益が上がらず、市街地に40aの畑を借り野菜作りを始めた。さらに昨年には、山間にある中辺路町で80aの農地を借りて規模を拡大。ナスをメインにキュウリ、トウモロコシ、キャベツ、白菜、レタスなど様々な野菜と梅を生産している。山の畑は「少し家から遠いのですが、市街地と比べて寒暖の差が大きく作物の味が良くなりますので、場所的には気に入っています」。もともと段々畑の田んぼで水分も多いことから「如何に水はけを良くするか」を課題として堆肥の大量投入など様々な工夫を凝らしている。
野菜は全て直売所に出荷。梅に加えて野菜を作り、徐々に技術を上げながら、消費者の評判も良いようで、直売所のホームページでも紹介されている。品質の向上と規模を拡大することで「最近ようやく利益が出てきました」。さらに生産量を増やせば、利益の向上に繋がるが、昨年借りた山の畑を使えるようにするためには様々な苦労もあったようで規模の拡大はそう簡単なことではない。
その中で今年の8月に購入したのがオーレックのハンマーナイフローターHR662。重労働となる草刈作業の大幅な労力削減に貢献している。「大変満足しています。最高」。山の畑は当初草だらけで、それを刈払機で刈り取っていたが「1反が2日も3日もかかる。夏場の作業で死にそうになりました」。そんな経験もあり、農機店で機械を借りて草を刈ってみると「もの凄く速くて、購入を即決しました」。日下さんが導入したハンマーナイフローターは10a、30分ほどで仕事ができ、その差は歴然。現在は梅畑の下草刈りや、圃場の草刈、収穫後の野菜残渣、残幹の処理に利用している。「残幹などは粉砕するので、そのまま耕耘して鋤き込むことができ、大変便利。一番重宝している機械です」。それまで刈払機で草刈を担当していたお父さんを重労働から解放することにもなった。
山の畑では、借りた土地の全てをまだ使い切っているわけではなく、これから大きな力を発揮しそうだ。また「草刈を請け負う仕事もできるのかなと思っています」。それも新たな収入源となりそうだ。
機械を使うことで作業に余裕を作ることができ、作物の面倒に時間をあてることもできる。「もっと良いナスを作りたいし、有機農業もやってみたい」。そんな思いが明日の農業を作って行くに違いない。

 

 

サタケユーザー 「玄米粉で6次産業」佐賀県唐津市 一粒田(坂本道彦さん、シヅヨさん)


 中山間地で、3haほどの水田を経営し、完全無農薬・無化学肥料の“あいがも農法”と自然農法で、こだわりの美味しいお米を生産している。また今年から6次産業にも取り組み、こだわりのお米を米粉にしてそれを原料にシフォンケーキの製造販売を開始した。安全安心なものを作りたいとする理想に向かって歩み続けてたどり着いた形であり、中山間地の農業が持続していくヒントがそこにある。

 

 
▲“坂本道彦(左)とシヅヨさん ▲小型製粉機SRG05B(左)と電気多目的乾燥機ソラーナキューブLH-103D

 

  今回お訪ねしたのは佐賀県唐津市。沿岸部は世界有数の漁場として知られる玄界灘を臨み、古くは大陸の窓口としても栄えてきた。一方、その背後には、緑溢れる山々が控え、豊かな自然に恵まれる。お伺いしたのはその山間部の集落で、山道を行けば、山の斜面を丁寧に開いて作られた棚田が広がる。先人の多大な労力の結晶であり、今もその美しさを保ちながら、日本の原風景が残されていた。未来に残すべき価値あるものがそこにある。しかし農地を集約して大規模農業を営むことは難しく、その地域の農業を如何にして持続していくか、課題も多い。そんな中山間地の集落で夢を持って農業に取り組んでいるのが、坂本道彦さん(61歳)、シヅヨさん(55歳)夫妻。完全無化学肥料無農薬の安全安心なお米作りを進めながら6次産業にも挑戦している。「あいがも農法で作ったお米を玄米で米粉にし、それを使ったシフォンケーキの製造販売を半年ぐらい前から始めました」。“あいがも農法の玄米っ粉シフォン”と名付け、農産物に付加価値をつける事で利益の向上を図っている。

 

 経営面積は約3haで、化学肥料や農薬を一切使用せず、その内1haではあいがも農法を取り入れている。また、田に引き入れる水は山の湧き水を利用。加えて山間部なので昼夜の温度差も大きく、稲が時間をかけてゆっくりと熟し、味の良い米が生み出される。反収は6~7俵だが、「安全安心なものを食べて頂きたい」と丹精込めた米作りを実践している。販売は“上場あいがも米”として、主に楽天などのインターネット通販や直売によって行われている。付加価値を付け、それを評価してくれる人たちに販売を行う。中山間地の農業が生き残っていく一つの道だ。

 しかし最初からこのような農業をしていたわけではなく、坂本さんが今の形となるまでには多くの紆余曲折があった。学校を卒業して最初に取り組んだのは家族が営むみかん栽培で、その傍ら「自然の中で牛が飼いたい」と酪農を始め、その上であいがも農法にも取り組み始める。しかし牛に手が回らなくなる等で、酪農をやめ、新たに地鶏や合鴨を提供するバーベキューレストランを展開。数年後には農協の役員を務めることを機にそこを閉じ、5年前には有機無農薬野菜の生産等を始める。しかし昨年、6次産業に取り組むため「人手も無いことから作物はお米一本」に絞り、奥様のシヅヨさんがシフォンケーキなどの加工を担当、道彦さんが、あいがも米などの生産を行う体制となり農園は“一粒田”と命名された。

 主流とは一線を画した道を歩み続けた農業とも言えそうだ。“できるだけ手をかけずに同じ物を同じようなやり方で効率的に作っていく方法”の対極にある。手間暇かけて、理想とする品質の高い物を作っていく農業で、その歩みは、今、時代の流れと重なっていく。

 

 そんな坂本さんが6次産業に取り組むために選んだ機械がサタケの小型製粉機SRG05Bと電気多目的乾燥機ソラーナキューブLH-103Dだ。これ以前にも精米所を新しくするために、昨年サタケの、乾燥機SDR25SEZG、光選別機ピカ選FGS-500C、籾摺機ネオライスマスターNPS550FWAM、選別計量機ネオグレードパッカーNPA32BVを導入しているが「使い易い」と評価も高く遠赤外線乾燥で食味を守り、光選別機で効率的な選別を行う。直接消費者に届けるこだわりのお米としての高い基準をクリアするため、大きな力を発揮している。「信頼しています」。それが新たな製品の導入にも繋がった。

 小型製粉機は「製粉された米粉が外気に直接触れず、密閉された状態で荷受箱に排出される機構が衛生面に優れていると思って決めました」とシヅヨさん。消費者と直接関わっていく6次産業において衛生を保つのは大きなポイントだ。

 続いて農産物を加工するために必要だろうと導入したのが電気多目的乾燥機ソラーナキューブ。電気式で野菜・果物などのドライ食品作りが気軽にできるもので、当初、「野菜などの乾燥ができれば良いな」と思っていたが、それを米粉作りにも活用している。

 シヅヨさんが作るシフォンケーキは思考錯誤の末、玄米を粉にしたものが使われている。「白米を粉にしたものも使いましたが、玄米のほうが美味しい」。そのため、玄米を粉にする前に“洗う”という工程が必要になってくる。また「精米したものをそのまま製粉するよりも玄米を一旦水洗いして、それを製粉する方が、よりきめ細かな粉となる」。そこで電気乾燥機の出番となる。

 「洗った玄米を乾燥させなければなりませんが、天日だと天気の都合があり、時間もかかるし、鳥に食べられたりもします。それでオーブンで乾かすという方法もありますが、一度に沢山の量はできません。そこで、電気乾燥機を利用してみると、綺麗な仕上がりで、まとまった量を乾燥させることができました」。3段のトレイを使い75℃で1時間、天候に左右されず、計画的な作業を実現。「温度と時間を設定するだけで本当に使いやすい。それに品質も思った以上」と満足度は高いようだ。

 

 そうして生み出されたシフォンケーキはふかふかの食感と玄米の美味しさが重なる深い味わいを持ち、幾らでも食べられそうな逸品だ。現在は地域の直売所などで販売されている。

 豊かな自然の中で育まれるこだわりの美味しいお米。その魅力を充分に活かしながら産み出される加工品。大きな価値がそこにある。丁寧に手をかけて高品質な農産物を生み出し、収益増を図ることが、中山間地農業が生き残る一つの道と言えそうだ。ただ6次産業で難しいのは、地域を超えて認知度を上げることで、どれだけ美味しい物でも知られなければ販売に結びつかない。その価値を正しく評価してくれる人に農村から如何に届けるかは大きな課題となる。坂本さんの場合、「ネットでの販売も」視野に入っているとのこと。価値あるものを生みだしそれを届けようとする情熱を強く感じた。そんな思いが農業活性化の大きな力になるに違いない。



導入機種:乾燥機SDR25SEZG、光選別機ピカ選FGS-500C、籾摺機ネオライスマスターNPS550FWAM、選別計量機ネオグレードパッカーNPA32BV、電気多目的乾燥機ソラーナキューブLH-103D、小型製粉機SRG05B

 

 

     
 ▲山あいにある田んぼ   ▲あいがもが大活躍  ▲玄米粉のシフォンケーキ

 

2015年5月号掲載

松山 代掻き作業 速くて、綺麗で、作業効率アップ


 農家の平均年齢は66.8歳。1年間で0.3歳も進んだ。平均年齢70歳に近づこうとする産業の持続性を図るためには後継者の育成が急務であり、様々な施策が講じられているが、なかなか思うようにはいかないのが現状だ。若者に農村部で働いてもらう。それは簡単なことではないが、地方創生と呼ばれるものはその先にこそあるのではないだろうか。今回はその中で、地域農業の担い手として奮闘している若手農家を尋ねた。松山の大型ウィングハローであるプレミアシリーズを導入し、時代に合った効的な農業を実践する。

 

 
▲“向野の江戸彼岸桜”をバックにWMD5000Nが力を発揮 ▲田嶋祐治さん

 

 富山県南砺市の野口集落は美しい田園風景の中にあり、4月にはその麗しい佇まいで知る人ぞ知る一本桜“向野の江戸彼岸桜”が花を咲かせ、景色に彩りを添える。そのすぐ近くに事務所を構えるのが農事組合法人野口営農組合。そこで、若手農家として機械をオペレートし、力を発揮しているのが、田嶋祐治さん(30歳)だ。同組合は約31haの経営面積で、酒米を主力に一部コシヒカリと転作に大麦、蕎麦を手がける。集落営農として野口地区の農家が全員参加し、地域農業の持続を図っている。他の地域同様、高齢化が進展し、組合員の多くは、60歳から70歳となっているが、主力作物を主食用米ではなく酒米とすることで、利益の確保を図るなど、将来を見据えた意欲的な経営を行っている。「昨年の米価下落もそれほど影響はありませんでした。農協から地元の造り酒屋さんに出荷される他、県外との取引もあります」。酒米は地域でも積極的に推進し、出荷先の“JAなんと”によって年に一度、造り酒屋が酒米の生産現場を訪れる交流会が開催されている。同組合が手がける山田錦と五百万石は、豊富に流れる冷たい水とその地の気候が合わさって味の評価は高く、品質も揃っている事から「もっと買いたい」という声も出ている。

 

 実需者に望まれる米を作る。同組合が農業を持続していく有力な一つの方法だと言えそうだ。そんな農業の中で昨年4月に導入されたのが松山の大型ウィングハロープレミアシリーズ。作業幅4.1〜5.0mのWMD-Nシリーズと5.0〜6.5mのWLD10シリーズがあり、同組合が購入したのは、5.0mのWMD5000N。それまで使用していた作業幅3メートル台のハローと比べ、大幅な効率化が図られることとなった。機械のオペレーターは田嶋さんと組合長の2人。田嶋さんが代掻きを進めながら、組合長が田植えをしていくという形の中で、作業幅5mのハローは大きな力となっている。1シーズンを経過して今年2シーズン目を迎える。「最初は4m台のものを検討していたのですが5mにして大正解。値段は高くなりますが、それ以上のメリットがある。作業は早いし仕上がりは綺麗。以前のものに比べて全然違います」。

 所有しているトラクターは83PS のホイルタイプと75PSのセミクローラタイプ。「多様な土質に応じて2台のトラクターを使い分けています」。どちらのトラクターに取り付けても、両側ウィングを折り畳んだ状態の作業時に、作業幅が車幅より広くなることが条件で、その上で、折りたたんだ状態でも土引きや車輪跡を消すソイルスライダーが機能することからWMD5000Nが選ばれた。「変形田が多いので折りたたんだ状態でしっかり作業が出来るのはありがたい。鋭角なほ場でも目一杯奥まで入っていける」。土質や作業条件に応じた選択だったようだ。


 この地域の土質は黒ボク、砂質、粘土質と様々な状態のものが混在し、1台のハローでそれぞれに対応する必要がある。石も多くそれが障害となって「トラクターの姿勢がしょっちゅう変わるのですが、スイングラバーが作用して均平に仕上がります」。均平板中央がラバーになっており、柔軟に捻れることで左右の傾きが補正される。また、「粘土性の強いところや荒代から少し日数が経ってしまった場所では均平板を抑える加圧キットを使います」。WMD5000Nに標準装備されているもので、圧力を加えて砕土率を向上させ土に負けない作業を実現する。

 この他にも、タイヤ跡を消すソイルスライダーは「有るのと無いのとでは全然違う。また可動式なのでホイールとクローラーとそれぞれの場所に合わせることができる」と評価は高く、無線リモコンのNコンや砕土性能・均平性能・耐摩耗性能を向上させたL814爪、耐久性を重視した動力伝達の上部クラッチ方式など、プレミアムな充実装備でプロのニーズに応える。


 田嶋さんの実作業はロータリーで荒起こしをした後、水を入れて再びロータリーで荒代を掻き、最後にウィングハローで仕上げるスタイル。30a1時間弱で、1日に3〜3.5haほど。「スピードも仕上がりも以前のものに比べて全然違う。砕土性が高く、水持ちが良くなるし、稲わらなどの埋め込み性能が格段に増している。以前は稲わらが所々立っている所がありましたが、それが無くなった。導入して大満足しています」と笑顔で語った。作業スピードの向上は燃料費などの節約になり、また規模拡大にも貢献する。それは農業の持続にも繋がる。


 生育状況についても、「砕土性が上がり、均平性が良く、高低差が少なくなったので、生育が安定している」。均一な品質を実現し、加工用米としての信用を醸成していく。

 それらを積み重ねた先にあるものは田嶋さんの夢とも重なっていく。「前向きで、厳しい状況に負けない、未来のある農業がしたいと思っています。自分を含めた若者が年をとっても農業ができるように」。それは持続していく農業であり、情熱を傾けても報われる農業でもある。そして地域の農業を支えていくことにもなる。「私たちの所の米で作ったお酒を海外に持っていって飲んでもらいたい」。若者が持つそんな夢が地域農業をさらに元気にしていくに違いない。


ニプロウィングハロープレミアシリーズ:ウィングハローWLD10/WMD-Nシリーズ

 《主な特長》①緊プロで開発された大型スプリングレーキ採用で高速作業が可能。②ソイルスライダーによりトラクタ車輪跡を消していく。WMD5000N、WLD10シリーズは可動式。③均平板中央に設けられたスイングラバーにより、レーキが絶えず水面に追随するため高い均平性能が得られる。④WMD5000N/WLD10シリーズは加圧キットを標準装備。⑤軸受部にフローティングシールを採用。シールの交換時期が大幅に伸びた。⑥WMD-Nシリーズには、砕土・埋め込み性能と耐久性を両立したL814爪を、WLD10シリーズは更に高耐久のM290G爪を装備している。




オーレック 製造現場ルポ 世界へオリジナルを届ける


 昭和23年に大橋農機製作所として誕生した現株式会社オーレック。創業以来、小型農機・緑地管理機を中心に製造・販売を行い、これまで一度も赤字を出したことがない。売上、利益とも年々増加を続けている。そこには何か秘密があるはずだと、同社を製造面から探るべく、取締役生産本部長・諏訪武富氏と若手社員2人から話を聞いた。

 

     
 ▲諏訪武富取締役生産本部長    ▲高山郁香さん  ▲森田展生さん

 

無駄な時間をなくしたい

 はじめに話を聞いたのは入社2年目の高山郁香さん(20歳)。「オーレックには学校の先輩が何人か勤めていて、担任の先生の勧めもあり、試験を受けました。入社して配属されたのは、工場での最後の部分となる“梱包”。最初の頃は、毎日、筋肉痛できつかったです」。

 入社した先輩たちで会社を辞めた人は1人もいなく、「良い会社に違いない」と思ったらしい。仕事の内容は、「ラインの最終でエンジンに残っているガソリンやオイルを抜いて、保護シートとベルトカバーを装着してダンボールに梱包するのですが、多い日は1日で150台にもなります。平均では3分で1台ですね」。同社の機械は、小型が中心とは言え60〜80kgはある製品を梱包するのは大変だろう。「何回か辞めたいと思ったこともありましたが、製品を農家に届ける工場としては最後の工程を任されていると考えたら、“やりがいのある仕事”と思えて今日まで続けてきました。それに友達と比べて、給料もいいので(笑)」。実はアパレルやウェートレスなどの仕事をしている友達を、ちょっとうらやましいと思ったこともあるそうだが、「祖母が農家で、オーレックの耕うん機はいつも身近にあったんです。その機械を一から作っている工場に勤めていることに胸を張れるんです」。

 入社が決まり、工場を見学し、様々な作業があるのが分かった高山さん。希望の部署もあったようで・・・。「プレスとか前工程の仕事をやってみたかったんです。ちょっと格好良いでしょ。事務系も良いかもと思ったのですが、パソコンが使えないので(笑)ダメですよねぇ」。しかし自分の仕事に邁進するうちに日々の仕事で改善点も見えてきた。「まだ仕事を完璧にこなせているとは言えません。まだまだ先輩から教えてもらうことは多いと思います。無駄な時間がありますし、逆に、忙しいとテンパってしまうこともあります。どんな事態にも対応できるようになりたいと思います。また、梱包資材も改良の余地があると思います」と意欲的に取り組んでいる。そんな仕事の頑張りにはプライベートの充実感もあるようだ。


システム化で生産性を向上

 次に話を聞いたのは入社13年目の中堅。生産改善部の森田展生さん(37歳)。「入社して7年間は開発部門でウイングモアー等の開発に携わりました。その後、今の生産改善部に転属となり工場内の整備・メンテを中心とした仕事をしています」。

 工場内での作業効率を向上させるのが仕事だが、開発からの図面をもとに溶接治具を制作したり、金型の設計・製作、自動化(ロボット化)等が主な仕事となる。「我が社は、内作率が非常に高く、様々な工作機械が必要となるのですが、これらをどうすれば効率良く動かせ、スムーズな仕事の流れを作れるかを考えるのが私の仕事です」。

 単純作業はロボットに任せるのが基本だが、そのために作業環境をどうするのかといった仕事も含まれる。「ロボットは電気さえあれば、24時間動き続けます。そういう面では作業人員を減らし、コストを削減することに貢献します。ただ、ロボットはイレギュラーに弱いのです。何かトラブルが起きたら止まってしまう。その点、人はトラブルに対応できることも多い」。まだまだロボット化についても問題は残っていそうだ。

 「生産でのネックを改善するのが仕事で、いつまでに何をどうするといったことを常に考えています。現場からは、多くの要望がありますので、それらにどう応えるかは簡単ではありません」。同社では生産本部で生産会議を開き、生産計画や生産改善計画を作成している。「例えば、生産会議で、この部品は1分で作りたいと言った方針が出されるのですが、人間だとどうしても1分半かかってしまう。ならばロボット化しようということになるわけです」。

 ロボット化だけではない。作業員がどう動いて仕事をしているのか。そこに無駄はないのか、効率を上げるためにはどうするのかといったこともある。「作業員の動線を考えたレイアウトも必要ですよね。部品をどこに置き、作業員がどう動けば無駄が減らせるのかといったことも大切です」。トヨタの工場が製造現場から注目されているが、「理想は工場内作業を全てシステム化することですね。製品づくりのスタートからゴールまでをシステム管理できれば最高です」。同社では受注増で工場での残業、休日出勤も増えている。こうしたことに生産改善部がどう対応するかにも期待されている。


安く軽く簡単な製品を目指す

 最後に、生産の責任者である諏訪武富本部長に話を聞いた。「入社して37年になります。55歳まで開発部門で仕事をしてきて、2009年から生産本部長として生産全体を見ています。今年からラインが1本増え、3本になり、仕事量も増えています」。

 工場での生産量は昨年と比較すると10%アップを見込んでいる。工場には今年7人の新入社員が入り、132人規模。「私は農家の出身。子供の頃から草刈などの作業を手伝っており、そのしんどさを知っていました。だから農家の人々が少しでも楽になる機械を作るのは使命だとも考えていましたので、ラビットモアー、ウイングモアー、スパイダーモアーなどの開発に携われたのは幸いでした」。

 組立工程には15m程のラインが3本。このラインで乗用草刈機も作られている。この工場の生産性の向上と品質確保をどうするのか。「トランスミッションから内作しているので、工程は多様です。常に問題点を捜し出して解決策を考え続けています」。

 世の中には様々な機械があるが、「農業機械が一番難しいかもしれません。家電は環境の良い所で使われるし、車はおもにアスファルトの上を走る。だけど、農機は道なき道を動き、作業しなければならない。そして、耐久性も要求される。本当のものづくりと言える。開発や営業から求められるものもあります」。製品が世に出るまでには、様々な人が関わっているが、同社では、月1回開催の部課長会議とは別に、週一回の早朝会議を行い、社内コミュニケーションを強化している。「月曜日の朝6時50分から会議をしています。2010年7月から始め、現時点で238回になる。ここで、各部門から困っていること、改善提案、要望などが話し合われることで、より良い製品作りに繋がる」。

 生産性の向上、高品質なものづくりにゴールはない。「幸い、わが社にはものづくりの大好きな社員が集まっています。離職者も非常に少ない。家庭の事情でどうしてもと言う人ぐらい。お互いが意見を出し合い、どうすれば農家の方に喜んでもらえる製品が作れるかを考えていきたい。そのためには工場の全作業を見える化し、数値化する生産管理システムを確立しなければならない。作業の無駄をなくし、物をスムーズに流し、早くお客様に製品が届けられるように努力を続けます」。世界を視野に入れたグローバルな製品と品質づくりを目指す同社の心髄を見たように思える。