株式会社マーケティングジャーナル

多士済々 農機業界人物ファイル

住友ゴム工業 産業タイヤ部長原田充博 

多様なニーズに応える
 1909年、我が国初のタイヤ工場として創業したのが住友ゴム工業。農機用タイヤの分野でも国産の魅力を発揮し現場のニーズに応えながら製品・サービスを展開している。産業タイヤ部の原田充博部長に、最近の状況、今後の方針などについて話を聞いた。

 

Q)世界情勢が不透明感を増す中、資源価格の値上がりも目立ってきました。また国内農機市場も芳しくありません。その状況下、最近の御社の業績は如何ですか。
原田)昨年の会社全体としての業績は国際会計基準で売上が7567億円(対前年比95%)。その内タイヤ事業が6484億円(同95%)。営業利益は733億円(同82%)。為替の影響があり減収減益となりました。農機用、建機用のタイヤを扱う産業タイヤ部も国内は厳しい状況で、前年割れでした。しかし産業タイヤ事業としては生産拠点のあるタイの事業が大きく伸び、トータルでは前年を上回りました。
Q)現在の生産・販売体制はどのようになっていますか。
原田)国内農機用のタイヤ製造は主に大阪府の泉大津工場で行われ、ファルケンブランドとして、トラクタ、コンバイン、田植機の他、草刈機、運搬車、除雪機など多くの農業機械にタイヤ、クローラが採用されています。またフォークリフトや建機用のホイールローダー、ミニショベル用のものも作っています。それらを新車に組み付けるライン用、交換需要に向けた市販用として販売しています。またタイでは、日系メーカ向けと、タイ・周辺国への市販市場に製品を供給し、大型畑作用のタイヤを日本にも輸出しています。
Q)国内の農機市場を見れば、需要減退が進んでいます。売上を確保するためにどのような取り組みを行っていますか。
原田)まずは市販用のタイヤ販売に力を入れています。全国には10のグループ販売会社があり、その営業活動を我々もサポートするという形で取り組み、昨年は2桁の伸びとなりました。市場には海外勢のものが入ってきていますが、国産メーカが作る純正部品として、高い品質と確実な供給、きめ細かいサービスで対応しました。私たちは1953年に日本で初めて耕うん機用のタイヤを発表して以来、長年農機用タイヤの製造に取り組み、例えばタイヤ交換におけるリム組みしやすいなどの高い作業性、優れた圧着性などといった技術を蓄積しています。そういったことも含めて昨年来、市販市場に対する私たちの取り組みを積極的にPRしてきましたので、農機販売店、ユーザーに対して信頼感を醸成できたのではないかと考えています。住友ゴムがファルケンブランド、ダンロップブランドで農機用タイヤ、クローラを展開していることの認知が広がってきたのではと思っています。
Q)商品展開ではどのような取り組みをされていますか。
原田)昨年より、タイで製造している農機用の大型タイヤをダンロップブランドとして輸入し、北海道などで畑作用に展開しています。それまでは、国内で作った60PS対応ぐらいまでのものを水田用のトラクタに展開していましたので新しいチャレンジです。また今シーズンから来シーズンにかけて、畑作に合ったローラグ仕様なども追加し、お客様の現場の声を聞いて技術にフィードバックしながらシリーズの充実を図っていきたいと思っています。大型タイヤの製造拠点はタイですが、国内メーカとして供給する訳ですから、海外勢に比べて価格競争力のあるものが提供できると思っています。
Q)タイヤメーカとして商品開発にはどのように取り組まれていますか。
原田)製品づくりで考えていることは“人にやさしく、環境にやさしく”ということです。その中で、作業性、燃費の向上などを図っています。例えば泥付低減タイヤは、圃場外への泥の持ち出しを少なくして省力化を実現し、軽量化では低燃費に繋がり、本機に負担をかけないことでメンテの手間も減らすことが出来ます。他にもタイヤが道を叩く音を低減するものや作業者の健康と本機への負担を減らすための振動を抑制するもの、セパレーションしないクローラで耐久性を向上するなど、人に優しく環境に優しいものを開発し、これをお客様に届けるという意識を部で共有しています。
Q)高い商品力は大きな魅力ですね。
原田)この思いを製品に反映させて来たことについて、取引先様からも評価いただいています。昨年は複数の農機メーカー様から表彰いただきました。現場の人の声を集め、それを何とか製品に活かしていこうとしていますので、その努力が認められたのだと思い、大変嬉しく思っています。
Q)今年度はどのような方針を立てられていますか。
原田)市販市場において弊社の存在感を上げていくことと、タイでのビジネスをもっと拡大していきたいと思っています。これが主な方針。それともう一つは、会社の方針でもありますが、“働き方改革”を進めていきます。最小のインプットで最大の利益を上げるために何をしていけば良いのかを常に考えて取り組んでいきます。それは業務の効率化を図るということでもあり、人を育てることも大切になります。そのために、心がけていることは、“気に掛ける、鍛える、期待する”の3つの“き”。部下が成長し個々が強くなることで組織が強くなり、実績を上げることに繋がっていくと考えています。
Q)業績目標についてお聞かせ下さい。
原田)目標を立てることは非常に大切だと考えています。それを先に立てておかないと、何をしたら良いのか分からない迷える子羊になってしまいます。まず夢を定め、そこに向かうために何をすれば良いのか考えることです。私たちの目標としては更なるシェアアップです。それを実現するために、商品の展開、販売ルートの構築、人の育成を行っていきます。
Q)本日は産業タイヤ部の若手、小山洋介氏が同席されていますが、人材育成について、どのような実感を持たれていますか。
小山)私は入社6年目で、最初の2年間は無我夢中でしたが、段々と仕事の進め方が分かり、一昨年去年と商売の実が結んできたのではないかと思っています。色々任せてもらいながら、一方で細かい所まで気に掛けていただき、困ればそれに応じたアドバイスがあります。それらが力になってきたと感じています。
Q)人の成長が業績目標の達成にとって欠かせないものとなっていますね。また“気に掛ける”ということは商売でも大切だと感じました。
原田)お客様の声を聞いて、それにどう応えていくかということに繋がります。手間はかかるかもしれませんが、これも農業と同じだと思っています。農業も一生懸命手を入れればそれに応じて目に見えた成果が現れます。それを基本として、効率化を図りながら何とか収穫を最大にしようと努力します。それと同じ事でお客様の声を聞くという手間暇を掛けながら、その上で最小のインプットで最大のアウトプットが出せるよう、効率化を図り、豊かな収穫を迎えることが出来る幸せな部になりたいと思っています。
Q)今後を期待しています。

記者の視線
 国産タイヤメーカとして長年に亘って事業を展開してきた同社の魅力はなんと言っても高い品質。それを支えているのはこれまで培ってきた技術力だが、今回お訪ねして、部門トップ自らが現場の声を聞こうとする姿勢にもあるのではないかと感じた。それこそが、求められる価値を提供する方法でもある。原田部長は昇進の時一番嬉しかったのは「奥さんが喜んでくれたこと」という。他者の喜びを自分の喜びとする。それはユーザーの満足を実現しようとする商売にも通じるに違いない。

 

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