株式会社マーケティングジャーナル

多士済々 農機業界人物ファイル

株式会社諸岡 代表取締役社長 諸岡正美氏

自分の敵は自分自身

 

 1958年に創立し、来年60周年を迎えるのが株式会社諸岡。ゴムクローラとHSTシステムによる建設機械、農林業機械、環境機械を展開し、国内に留まらないグローバルな広がりを見せている。諸岡社長に、最近の状況、課題、これからの取り組みなどについて聞いた。

Q)来年の2018年には創立60周年という節目を迎えます。その中、御社では5ヵ年の中期計画を進めていらっしゃいますが進展は如何ですか。
諸岡)ちょうど2年が経過し、今年の4月で3年目に入りました。「GO5 MOROOKA 2020」として2020年3月までの計画です。今の世界情勢や日本の状況を見ながら、最初の3年間で成長に向けた基盤整備をしっかり行い、残り2年でそれを基にして成長しようというのが元々の計画です。今年は最初の3年間の最終年。しっかりとした基盤づくりを進めていきます。
Q)具体的にはどのような事をされますか。
諸岡)例えば物づくりに関しては、私たちはメーカーですから、お客さんから注文を頂けば、なるべく早く、物を作って出していくのが使命です。当然、コストはできるだけ抑えて。そのための生産管理、原価管理、購買などの仕組みにはまだまだ弱いところがあり、そういった所を強化していきたい。また部品・サービスといった面では、海外向けの部品・サービスがまだまだですので、そういう部分の体制をしっかりする必要があります。後は、総務や営業部門など会社のルールの整備などです。
Q)事業拡大が先行してしまったという状況でしょうか。
諸岡)仰る通りです。私どもはここ5、6年の間に急激に成長し、売上が100億円を超す会社になりました。それに見合う体制にしていかなければなりません。またそこから先に行くためには、しっかりとした土台がなければなりません。基盤を作るということは、次なる高い山を作るための土台、すそ野を広げるということです。そのためには今言った細かいことが大切で、昨年は執行役員制度も設けました。
Q)成長の基盤としてはグローバルな展開にも力を入れておられますね。
諸岡)その一つとして、昨年の7月にアメリカの製造会社を100%子会社化しました。4年前から技術供与し建設用運搬車の製造委託をしていた会社です。7月以降の売上は、アメリカの景気に連動してあまり良くなかったのですが、年明けにトランプ大統領が就任し、アメリカで物を作る価値が高まる中、天然ガスやシェールガスのパイプライン工事が再開されるなどで、需要が回復し、1月から実質黒字化しました。7月から3月までで14億円ほどです。また今年の4月にはM&Aでドイツに販売会社の諸岡ヨーロッパを設立しました。
Q)今後の事業展開ではこの海外が重要になってきますね。
諸岡)次なる成長に向けて考え方を変えなければいけない時に来ています。国内の諸岡単体だけが成長するという事ではなく、グループ全体の成長を考えていかなければなりません。売上もグループ全体で見ると前期は約115億。年次目標は達成することができました。
Q)国内事業の今後はどのように展開されていきますか。
諸岡)大きく分けると建設、林業系、環境という3本の柱があります。メーカーは常に新しい商品を作り続けるのが使命だと思っていますので、既存の分野でもこれまでとは違う新しい機械を作っていきます。建設分野では不整地運搬車がメインですがそれ以外の、例えば高所作業車やクレーン、IoTを使った今までなかった新しい商品を作るなど考えられます。環境の分野では、今、タブグラインダーという木材を破砕する機械をメインに、小型チッパーやふるい機を発売していますが、それ以外にも石を砕いたり、鉄板を処理するような機械があると思います。このように商品のカテゴリを増やしていくことによって、事業を拡大していきます。それともう一つは新しい分野の機械を開発して事業を拡大する方法です。今3本柱で事業を展開していますが、しっかり立つ4本目として新しい分野を模索中です。農業分野も当然考えられます。今、ゴムクローラ式のフォークリフトを展開しメガソーラーの敷設用機械として利用され、重量野菜の収穫にも活用されています。4本目の柱としては時々の時代背景に合わせた機械開発を行っていきます。また新しい商品の展開と同時に、部品・サービス事業にも注力し、ここ2年ぐらいその効果が現れ、部品の売上は15%の割合で増えています。
Q)創立60周年に対してどのようなご感想をお持ちでしょうか。
諸岡)60周年というのは単純に言うと通過点。ただ今迄のことを振り返る、良いタイミングとも思います。特に私どもはここ5、6年で急激に成長し、7年前から新卒学生の定期採用を始めていますので、そういう人たちに諸岡の過去の歴史などを再確認してもらい、それを土台にして、これからの会社のあり方を考えて貰う何らかのきっかけになる年にしたいと思っています。今は60周年プロジェクトチームを作り、様々なイベントの企画等を行っています。
Q)諸岡社長も来年に60歳を迎えられるとの事。感慨はございますか。
諸岡)30歳の時に社長になり、それから30年。最初の頃は小さな中小企業でしたから何でも自分でやっていましたが、40歳半ばあたりから、個人では限界があると感じ、任せることができるスタッフを育てなければと思い、そのような体制作りを進めました。そして50歳くらいからは、会社の体制を整えることに取り組み、60歳の還暦を迎えます。これからは次の世代をどうするのか。その準備を始めなければなりません。長くやっていると、今やっていることが普通だ、当たり前だということになります。だから最近思うのは、自分の敵は自分自身だということ。もちろん私達にも競争相手はいますが、まずは自分の会社が競争相手であるということです。そう思いながら、それに勝つにはどうすれば良いのか、これよりもっと良くするためにはどうすれば良いのか、そういうふうに思わないと前に進みません。しかし今までこういうふうにやってきたからと、同じ事の繰り返しになりがちです。これは経営者も同じ。長年の経験やこれまでやってきたことが頭の中に染み込んでいますから。なかなか核心的なことができなくなり、ついつい消極的になってしまいます。それではいけません。我が社の社是に“道なき未知を切り拓く”とありますが、そういうことを戒めています。それが創業の精神だと思います。
Q)60周年の先は、どのようにお考えですか。
諸岡)会社が60年間続いてきたのは、お客様を始め、働いている社員、家族、地域の皆様、協力会社様などのおかげ。そういう中で、我々は事業を継続し、さらに共に発展していきたいと思っています。創業者の言葉に“世の中の人に後れをとりぬべし、進まぬ時に進まざりせば”というものがあります。人よりも先にやるということで、要は一歩踏み出す勇気だと思います。もちろんリスクはあります。ただその精神は貫き、今後も大切にしていきたいと思います。
Q)飛躍を期待しています。

記者の視線
ここ数年急速な成長を果たし、売上が100億円を超え、従業員は約160名。話の中から身の丈にあった新しい衣を身に纏う時期に今差し掛かっているのだと感じた。来年は創立60周年。まさに節目の年となりそうだ。また一方で創業者の言葉を大切にしているのも印象的だった。本文で紹介した以外にも“欲深き人の心と降る雪は、積りにつけてその道を忘れる”などがあり、経営の指針になっている。実家は元々農家。老後は農業に取り組むとのこと。農業分野には意欲的だ。



田中産業株式会社 代表取締役社長 田中達也氏

お客様に選ばれ続けるメーカーに
 1954年、初代田中功氏が農・畜産用包装資材の製販を手がける会社として創業した田中産業。3代目社長として田中逸郎氏がこれまで指揮を取ってきたが、本年4月、長男の田中達也氏にバトンタッチ。新社長に経営方針、抱負などを聞いた。

 

Q)就任に至る経緯は?
田中)田中逸郎前社長は2000年6月5日、社長に就任し、この3月まで務めてきたが、2001年に脳梗塞を患い、回復し責務を果たしてきたが、2回目の梗塞などにより体力・気力が低下し、今回の交替となった。
Q)就任に当たって抱負は?
田中)田中産業は、農家の皆様から長年のご愛顧を賜り、収穫資材、作業着など“安心安全”を重視した製品を農業市場に供給してきた。昨今の農業市場、農作業形態の変化には目を見張るものがあり、弊社も時代と共に進化し挑戦し続け、商品開発、営業活動に取り組みたいと考えている。そして、これからもお客様に選ばれ続ける農業資材メーカーとなることを目指して、全力を尽くす。
Q)初代、3代目社長からどんなことを学ばれたか?
田中)祖父、父からは、農家がほしいもの、助かるものを開発するという姿勢を教えてもらった。商品開発に当たっては、農家の立場に立って考えるということ。
Q)産学連携を行っておられるが。
田中)農業の現場はどんどん変化している。農業女子、農業アイドル、若い人達による法人化など新しい動きに対応すべく、神戸芸術工科大学や兵庫県とも連携し、現場の声を取り入れた新しい作業着を開発した。学生をはじめ農業関係以外の人々からの刺激を商品開発につなげたい。
Q)新しい取組は?
田中)営業体制をこれまで以上に広げたい。これまでの歴史の中で変化させてはいけないものと変化しなければいけないものがある。新しい分野への挑戦は必要と考えている。例えば、弊社が得意としている袋物を農業以外で活用してもらうといったこと。
Q)農業経営の規模が拡大傾向にある。
田中)法人化や大規模経営が増えている。当然、機械も大型化やICT化が進んでいる。つまり米関係でも運搬や乾燥のあり方も変わってきている。JAのカントリー、ライスセンターも、その状況に対応しつつある。こうしたことから今回「スタンドバッグ角スター」「スタンドバッグ角プロ」を新発売する。
Q)これまでの仕事で得たものは?
田中)入社して農業の現場を歩き、農業や農家の知識を得て、農産物は生き物だということ、生命や環境をこれまで以上に重要だと考えるようになった。農家と喜びを分かち合える会社でなければとの思いが強くなった。
Q)今後の方針は?
田中)着実な業績向上を目標としている。特に今年度は、スタンドバッグの施設、担い手への拡販、ゴアテックの拡大を重点に展開していく。
Q)座右の銘などあれば。
田中)“義を見てせざるは勇無きなり”。人としてなすべきと知りつつ、それを実行しないのは勇気がないということ。社内でも自由に意見が言える環境をつくりたいと考えている。

田中達也氏略歴
 1984年6月19日生まれ、32歳。LEC東京リーガルマインド大学院大学卒業。2011年2月田中産業入社、2013年4月関東営業所(この時期、神戸芸術工科大学と産学連携に取組)、2016年4月本社総務部を兼務、2016年6月取締役に就任、2016年9月常務取締役に就任、2017年4月代表取締役社長に就任。
 趣味は映画鑑賞、テニス

 

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