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住友ゴム工業:「泉大津から信頼のブランドを全国へ」

 

 ダンロップ、ファルケンのブランドで農耕機用のタイヤを国内生産しているのが住友ゴム工業。生産現場のユーザーからは、「ゴム質が柔らかい」、「安定性があって乗り心地が良い」、「土の持ち出しが少ない」との声も聞かれ、整備担当からは「装着性が良くてすんなりはまる」との評価も。そんな住友ゴム工業のタイヤが“どこで、誰に”作られているのか。農耕機用タイヤの製造現場を訪ねた。


▲面川工場長(右)と原田部長▲泉大津工場の玄関

 

 住友ゴム工業はタイヤ事業、スポーツ事業、産業品事業を展開し、主力となっているタイヤ事業では、ダンロップ、ファルケンの2ブランドから乗用車、バス、トラック、建設車両、レース、モーターサイクル、農耕機、などで使う各種のタイヤを生産し販売している。拠点は国内の他、アジア、北米、欧州、その他に広がり、高度な技術研究センターを核に最新の設計、シミュレーション技術で、時代をリードするタイヤを開発している。国内のタイヤ製造拠点は福島県の白河工場、愛知県の名古屋工場、宮崎県の宮崎工場、そして大阪府の泉大津工場の4ヵ所。この中で、農耕機用のタイヤを作っているのが泉大津工場となる。

 同工場で工場長を務める面川寿彦氏と製造課員の方々がこの地でのタイヤ作りについて話してくれた。「泉大津工場の操業開始は1944年です。当初は大日本航空機タイヤとして設立され、ハヤブサなどのタイヤを生産していました」。高い信頼性が求められる航空機のタイヤ製造を始まりとして、終戦後は生活用品を作る大津ゴム工業となり、その後、自動車のタイヤ製造に携わり、1962年にオーツタイヤに改称した。

 農耕機用タイヤを手がけるきっかけとなったのは、1952年、「岡山の発明家がトラクションをかけることができる耕うん機用のタイヤをデザインし、こういうものはないのかと、地元の販売店に持ち込んだことが始まりです」。それをもとに泉大津の技術陣が開発に取り組み、現在のハイラグタイヤの原型を完成させた。これが大きく普及しオーツタイヤの成長の基盤となった。そして2003年には住友ゴム工業と合併し現在に至っている。

 泉大津工場は、敷地面積が7万7000㎡で生産能力は月産750t。国内4工場の中では一番規模の小さなものとなっているが、「神戸にある本社と比較的近く、その立地を活かし、本社の技術開発の機能を受け入れ、また生産技術の開発や海外工場の製造支援が行える人材の育成にも取り組んでいます」。SUV(スポーツユーティリティービークル)用のタイヤでは独自に開発された太陽工法(ストリップワインド工法)を採用。「従来の100mにも及ぶような生産設備を使わないで、コンパクトに組み立てる方法です。イニシャルコストを低くし、面積当たりの生産性が高く、世界戦略の武器ともなります」。最新の製造技術を開発する拠点であり、将来に向けての競争力維持を担っている。

 マネージメントシステムの認証にも積極的に取り組み、環境に係わるISO14001、安全に係わるISO18001、品質に係わるISO9001、そして2018年には、「自動車の世界で一番厳しいとされるIATF16949を取得しました」。国際自動車産業特別委員会が作成した規格を満たすもので、最新の自動車作りに参加できる世界最高水準のマネージメントシステム。この生産環境の中で、農耕機用のタイヤが作られている。「それが私たちのプライドでもあります」。“泉大津工場から世界へ発信”を掲げ、世界に通用するもの作りが行われている。

 「タイヤは生きています。タイヤ作りにはレシピがあるのですが、その通りに作っても必ずしも良品ができるとは限りません。その時々の温度、湿度、材質などがあって、それをうまく管理していかなければなりません。それが難しさでもあり魅力でもあります」。知識と経験、それを形にする技能が必要であり、それは一朝一夕に得られる物ではない。農耕機用のバイアスタイヤは手作業の部分も多く、生産現場で培われたノウハウ、作り手の技量が品質に反映される。工場を見学し生産現場の随所に技量の高さを感じた。「最高のセンサーは人間です。細かい所を人の目で見て、もの作りが行われています」。ハイエンドの乗用車タイヤでも手作りが行われており、その良さがバイアスタイヤにも活かされている。そのため人材育成は品質を保つための重要な仕事。同社では、全社を対象に技能オリンピックなども開催し、世界の12工場から製造部員が集まり、タイヤを製造する技術と知識を競って、技量を高め合っている。

 タイヤ作りの特徴的な工程に加硫工程がある。トレッドパターンや刻印が施された金型に成形したタイヤを入れ、加熱・加圧し、化学反応によって強力な弾性ゴムのタイヤに仕上げる。泉大津工場はハイラグタイヤが産み出された場所でもあり、その工程に長い歴史で培われた、もの作りの智恵を感じることができた。また同工場では“泥付低減タイヤ”なども作られている。時代の変化に対応しようとする積極的な姿がこの工程から感じ取れた。

 こうしてできたタイヤは全量検査が行われる。また抜き取りによる破壊検査で断面が設計の狙い通りにできているかのチェックや、加圧しての性能検査などを実施し、試験データは開発部で解析もされる。それが「農繁期でも働き続ける安全と安心を提供」することになる。

 今後の展開としては、「農業技術の進化に合わせて細かなニーズに応えていきたい」とし、例えばトラクタでは無人化が進んでいるが、空気が抜ければ直進性が損なわれる、パンクしてしまえば無人では帰ってこられない。その中では「エアレスのタイヤやノーパンクタイヤが役立ちます。私たちはその技術を持っています」。新しい時代の農業に対応したソリューションがこの地から提供されていく。

 現在、ダンロップ、ファルケンの農耕機用タイヤは、全国に10社あるダンロップ販社から全国約500店に及ぶ販売店へと供給されている。「営業所、直営店、ダンロップの看板を上げているお店などにお問い合わせ頂ければ、全国どこでも翌々日にはお客様のもとにお届けできます」と産業タイヤ部の原田充博部長。泉大津から産み出される高品質な農耕機用タイヤが、北海道、九州、沖縄までの販売ネットワークにのって、迅速に供給されていく。「安くて良い物を、そして安心できるものを」。その実践の積み重ねが信頼のあるブランドに繋がっていくに違いない。



 

 

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